碧は染まった
□ハンター試験 後半
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「それでその時ね!」
「うん」
三次試験終了後。次の試験会場であるゼビル島へ向かう船の上。
ある一角で楽しげな声が響いていた。
主にその元であるゴンは身ぶり手振りを使ってまで隣の男…マナと話す。
それを見ていたキルアはイライラしていた。
マナは底がしれない。何を考えているのか全くわからない。そんな奴に、なんでゴンはなついてるのか。
それに…次の四次試験が"狩るもの狩られるもの"だってこと分かってんのか?
にこにこ話してるマナの胸にプレートはない。楽しげに話しているように見えてしっかりと対策をしてる。…やっぱり油断ならない。せめてあいつのプレート番号は知っておきたい。
オレの標的がもしかしたらマナかもしれない。
「ずいぶんもりあがってるな」
「あ、キルア!丁度今キルアの話してて…」
「オレの話?」
ゴンの言葉に首を傾げてみせる。オレの話、といえば暗殺一家であることか。
「……」
「、なんだよ」
マナがじっとこちらを見ていた。どき、と胸が跳ねる。…まただ。こいつを気に入らない理由の一つがこの変な感覚だった。…こいつに見られると妙に落ち着かない。見透かされているような感覚になる。
「いや。……俺の言葉は信用に値しないだろうけど、ターゲットは君ではないよ」
「…………は?」
一瞬何を言ってるのか分からなかった。ただ、それが次の試験の事だと直ぐに気づいた。
「…あれ?てっきりそれで警戒しているんだと思ったんだけど」
マナはきょとんとした顔で首を傾げる。……見透かされている感覚は気のせいかもしれない。その無防備なまでの表情に過剰になっていた自分がバカバカしく感じた。
「もちろん、ゴンでもない」
「あ!オレもマナさんがターゲットじゃないよ!」
「ちょ、オイ!」
あっさりと答えたゴンに制止をかける。いくらなんでも警戒しなさすぎだろ。マナはさっきくじで引いたカードを見せた訳じゃない。言葉でならなんとでも言える。
「マナさんは大丈夫だよ」
「…………」
……これはもう明らかにゴンは信者になってるな。ゴンの感覚は信用できるけど、ゴンが騙されやすいこともオレは知ってる。
「…さて、そろそろ俺は甲板に戻るよ」
「えー!もう?」
「ああ。…どうやら話せば話すほど警戒されてしまうみたいだから」
マナはにこり、と笑ってゴンをなだめてからオレを一瞥する。…オレのことを言っているらしい。
オレとしてもマナがいなくなるのは都合がいい。
「…"マナさん"。もしオレのターゲットがあんただったとしても、手加減はしねーからな」
挑発的に言えばマナは目を丸くした。それから笑う。
「大丈夫。それはないから。それより"マナ"でいい。俺もキルアって呼んでるから」
マナはそう言うと去っていった。……それはない、って。あんな自信満々に言うか普通。はったりにもなってない。
「……マナって変人だな」
「?そうかな」
首を傾げるゴンの隣に腰を掛ける。
「ゴン。マナの番号わかるか?」
それから聞きたかったことのひとつを尋ねる。オレはあいつに興味なんてなかったからプレートの番号なんて確認してない。だけど、ゴンなら知ってる筈だ。
「それがオレもわからないんだ」
「は?お前覚えてねーの?」
見る機会はたくさんあった筈だ。覚えようとして見なくたって目に入ってくれば覚えてるだろ。
「ううん。そうじゃなくてマナさんのプレート自体見てないんだ」
ゴンの言葉に眉を寄せる。
「なんだよ。じゃあ、あいつは最初からつけてねーっていうのか」
「最初からかはわからないけど。オレは見てない」
…単に簡単に見えるところにつけてなかっただけか?…確かにプレートを貰ったとき必ず胸につけろ、なんて言われてないし。
「………」
………。
て、別にそんな考えるようなことじゃないだろ。
思考に陥っていた頭を振る。
別にマナがターゲットだろうとオレを狩るものだろうと関係ない。
それより、
「何番引いた?」
オレは少しの沈黙の後、ゴンに尋ねた。