碧は染まった

□9/2
1ページ/5ページ


着信が入ったのに気づき、時計をみる。……もう朝か。時間の感覚がおかしいのはいつものことだ。

着信に出ると、迎えに来てくれるらしい。場所を指定されたので早速移動を開始する。

ネットでは既にセメタリービルの件が大きく載っていた。客が消え、競売品も消えた。そしてもう少し深く調べると大体の状況が分かった。

競売品を盗んだとして旅団には懸賞金がかけられていた。マフィアはこぞって旅団を追ったが、返り討ちにあい全滅。
そしてマフィアを束ねるマフィアンコミュニティーお抱えの傭兵集団"陰獣"が動いた。…が、旅団が捕まった情報はない。マフィアと同じく"返り討ち"が濃厚。

そして気になるのが旅団の一人を捕らえた、という情報。これは匿名での呟き。捕まえた本人がネットに書き込む可能性は低いので、どこかの野次馬か情報屋。なんにせよ不測の事態はこれしか考えられない。

同時にあるマフィアコミュニティーの組員が襲われ、ほぼ全滅。…恐らく捕まった誰かを助けにきた旅団によるもの。つまり、彼らはもう助かっている。

シャルナークの着信でも"終わったから迎えに行く"と言っていた。

…無事に済んだのならよかった。私は息をつく。

「…」
『?あれ』

影がかかり見上げれば思っていた顔と異なる。…シャルナークから電話が来たのだからシャルが来ると思っていた。

『フィンクス。元気そうだね』
「ああ」

同じ金髪でも別人。ジャージ姿のフィンクスだった。フィンクスはベンチに座る私を見下ろしてそれから辺りを見てまた私に視線を戻す。

「どれぐらい待った」
『ほんの10分程度だけど、?』
「ならいい」

フィンクスは私に背を向ける。慌てて立ち上がる。読んでいたカタログも忘れずに抱える。

「欲しいもんでもあるのか」
『あるにはあるけど、これを見ていたのは興味だよ。グリードアイランドって知ってる?』

尋ねるとフィンクスは少しだけ驚いた顔をする。

「ああ。世界一高価で危険なゲームだとフェイタンが言ってた」
『そうらしいね。知り合いが欲しがってて、一体どんなゲームかと調べていたんだ』

グリードアイランドが出品されるサザンピースオークションのカタログにはゲームの概要からプレイ方法まで書いてあった。その注意書きにはご丁寧に"このゲームは実際に死ぬ危険があります"と書かれていた。その下には"世界から一生脱出できない危険があります"とも。世界一危険というのは間違いない。

ハンター専用ゲームと書かれていることから念を習得していることが必須条件らしい。

このゲームにゴンの父親の手がかりがある。……まさか父親がずっとその世界にいるかも、てことはないよね。

『しかし、競り落とすのは難しそうだ。…別の方法を捜すべきかな』

お金の問題ではなかった。…どういう目的か、グリードアイランドを集めている者がいた。バッテラという初老の男。競りでこちらが高い金額を宣言してもバッテラは4倍、5倍と被せてきて絶対に競り落とすらしい。その為バッテラは既に多くのグリードアイランドを所有していた。熱心な愛好家なのか。それとも目的でもあるのか。……何にせよ私もお金はある方だが向こうがいくらでも被せてくるなら私の財力がつきる方が先。

それこそバッテラの屋敷からグリードアイランドを盗んでしまう方が簡単だ。

「盗ってきてやろうか?」
『ありがたいけど、大丈夫。必要だったら自分で盗るよ』
「…」
『そんなに驚くことかな』

目を開いたフィンクスに笑う。

『それしか手がないのに選ばない理由はないだろう』

まぁ、ゴンたちに盗品を渡すわけにもいかないから手は考えないと。

『それより、私は君が来たことに驚いたよ。シャルナークは?』

最初の疑問をぶつける。…シャルナークに何かあった、とも考えられるし。

「あいつらは昨日の一件で顔が割れてんだ。だからオレが来た」
『ああ、なるほど』

フィンクスは昨日あそこに居なかった。顔は割れていないということだろう。


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ