碧は染まった

□世界でただ一人
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そこはいつもの教会だった。

穏やかな光、きらびやかなステンドグラス。
たくさんの本。彼らの声。

「ノア」

手を引かれて外に出る。

そこにはゴミの山としか言えない様な風景が永遠と並び、遠くに建物が見える。その建物のひとつに歩いていくと、商人から道具を買う。

買い物が終われば、また教会に帰る。

彼らが私を迎えて、私も彼らに笑いかける。

「ノア」

__わかっている。これは夢だ。

教会の女神像の前に座り、横たわる。…私の周りには子供達がいた。


私は"この時"から何も成長していない。


見た目も、能力も、愛情も。

だから、この光景が当たり前でひどく平凡なものだと勘違いしてしまった。

この世界でただ一人、私だけが取り残されているというのに。その事を認識していながら、傍観していた。

…恐れていた。両親が死んだときよりも苦しいことは分かっていたから。

だけど…愛する人が死んでしまうのが、こんなにも、悲しいものだとは知らなかった。

「ノア、起きて」

__わかってる。もう少しで起きるよ。


もう少しで起きるから。

だから、あと少しだけ眠らせて。



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