彼女は何を望む

□可愛くない孫
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_ギィ

と開いたのは1の扉。出てきたのは自分と同じ銀色。けれど、長い。

『あらお爺様』
「何がお爺様だ」

ワシを見てにっこりと笑っている孫に眉を寄せる。この孫、メルイはかなりの問題児。ことあるごとに何かを起こす。そして今回も例外じゃない。

「謀りおったな」
『はて、何のことかしら』
「とぼけても無駄だ。茶髪の男が全てを吐いた」

仕事中に違和感を感じたのだ。事前の資料よりも標的が多い、と。勿論事前の情報だけが全てという訳ではないが、それでも感じたのは長年の経験故。標的全てではないが、ちらほらと何人かはこちらのことを知っている。そんな気がした。

一人を残して始末した後、その一人を半ば拷問する形で問いただせば、出てきたのは"メルイ"という孫の名前。

『うーん、やっぱりお金が全てではないか。それで、殺したの?』
「ターゲットに含まれておったからの」
『ならいいや』

あっけらかんと答えてワシの横をなに食わぬ顔で通りすぎようとするメルイ。

「待て」

それをあきれながら止める。誰がこのまま大人しく帰すだろう。

『茶髪くんからはどこまで聞き出したの?』

メルイも予想していたのか、こちらの問いを理解した問いかけをしてきた。

「おぬしがワシの仕事を長引かせようとしたことくらいじゃの」
『それ全部じゃん』
「ワシの聞きたいことはわかるな?」

聞けばメルイはにっこりと笑う。

『なら、その答えも大体予想がついてるでしょう?』
「可愛いげのない孫だ」
『そうでしょう』

全く褒めていないがメルイは満足げな顔だった。…一体両親のどちらに似たのか。かれこれ24年は経つというのに未だに分からない。かといって自分に似ているとも思えん。

「………」

ワシの答えはメルイの手の血の中。

「キルアじゃろ」
『うん。逃げたがってたから』
「手を貸したのか」
『そういう訳じゃないよ。私が貸さずともその内キルアは出ていったし。だから貸しを作ったの』

そう言ってメルイは自分の手を持ち上げワシにも見えるようにその血を舐める。ワシの表情は言うまでもなく苦い。

『ママとミルキか…ママは化粧の味がするから顔。ミルキはお腹だね。どちらも致命傷ではないか。…ふーん、流石に自制が効いたのか』

メルイは異常な味覚を持っていた。
ただ、食べ物を食べて使われている食材や調味料を当てるくらいなら分かる。けれど、その食材がどれくらい焼かれたものなのか、温度や、調味料の賞味期限、原産地まで分かるのだから異常だ。人の血に関しては血液型は勿論、簡単な健康診断から、最近食べたものや、性格なんてものも分析出来てしまう。

彼女が食べることを好んでいるのはこれが原因だろう。

『パパにはご内密に』
「…ま、ターゲットには代わりないからの、とでも言うと思ったか」
『けち。おじいちゃんのバカ』
「何とでも言え」

明らかにむすっと口を膨らますメルイ。それだけなら可愛いげがあるが、腹の中は真っ黒。

『ま、いいけど』

そう言いまた歩き出すメルイ。

「他にも」
『んー?』
「他にも色々仕組んだな。…明らかに執事の数が少ない」

それに、もしかしたらイルミやシルバの仕事さえ…いや、考えすぎか?けれどこの孫ならあり得る。

『さぁ、どうだろう』
「メルイ」
『ママとミルキ直してくるから』

振り替えることなくメルイは進む。もう何も答える気はないらしい。…こうなったら無駄なことをワシは知っていた。頑固とかというものじゃない。口を割らせるだけの労力は意味がない。

「…さて、どうしたものか」

シルバに報告はするとして、今回の事態。どう始末をつけよう。

キルアにしても、メルイにしても。

 

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