SECOND TIMES

□石田雨竜
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そして不幸は訪れた


第一学年 一学期 期末考慮上位成績者

そう張り出された紙にはずらーっと名前が並んでいる

一位は相変わらずの石田さん
三位に織姫が入り、一護は23位とまあ好成績。

『…………』
「椎名どーかしたか?さっきからうつむいてっけど」
『不幸だ…』

某アニメ主人公の様に嘆く。先週黒猫に会ってその次の日なんもなかったのになんだよコレ。
不幸は遅れてやってくるんですね。

一護は私の隣に並びもう一度順位表を見ている。

「…お前名前載ってねぇなんて珍しいな。調子悪かったのか?」
『いや、総合得点は900』
「900!?おま、頭良すぎだろ」
『だが、全答案用紙の名前書き忘れにより最下位』
「…そ、そりぁ…災難だな」

災難だよまったく。まぁ多分、点数は良いから先生はあんまり言ってこないだろうけど…名前書き忘れって…書き忘れって………

全てはあの黒猫のせいだ、ああ!そうだ!そういうことにしよう。

『……先教室いく』
「お、おう」











教室にはパラパラと人が居て帰る用意をしている。
でも多くはまだ、廊下の順位表を見ているらしい。

あ、今回の一位発見。

嫌味よろしく声掛けるか

『いやー、相変わらず一位っすね』

少し驚いた顔の石田さん。

「…本来なら旭さんが一位だ。900点なんだろう?」

今度は私が驚く番だった。いやそれ、どこで聞いたのさ。

「…いつも5番以内に入ってる人が、50位にも入って無かったら気になるだろう。先生に聞いたんだ」
『勝手に心を読まないで頂きたい』
「聞きたそうな顔をしていたからね」

いやどんな顔?
それに、先生。そんな簡単に生徒の点数バラしていいんですか。せめて本人に確認とれよ。

「名前の書き忘れって…」

呆れた様な少しバカにしたような顔の石田さん。私だって好きで忘れた訳じゃないのだよ。なんせ

『それは黒猫のせいなんで』
「黒猫…?」

石田さんの眉間に余計に皺が寄った

「石田くーん」
『あ、みちる、さん(多分)』
「あ!椎名ちゃん!聞いたよ、本当は900点で一位なのに名前書き忘れて最下位だっ、て!」

先生どれだけバラしてんですか。信用性0じゃないですか。

「…で、なんの用だい」
「あ、あの。このぬいぐるみ」

石田さんが話しかけると少し怯えるみちるさん。
おずおずと差し出したのは腹が縦に裂けた、趣味がいいとはいえないぬいぐるみ。目が瞳孔開いてんじゃん。怖いんだけど。

すると石田さんは箱を取り出す

『?ペンケース?』
「いや。裁縫セットだよ」

ほぅ裁縫セットね。…え、裁縫セット?

カシャッと裁縫セットを開け、中から針と糸を取りだす。
それからシュパと針に糸を通し、あっという間にぬいぐるみを直していく。
かかった時間コンマ0.5。早っ。

まさか見た目にそぐわぬこんな才能があったとは…。

「な…なおった!!ありがとう石田くん!!」

みちるさんは大喜びだが

「いいよお礼なんて。たいしたことしたわけじゃない」

と石田さんは突っぱねるような冷たい態度。怖く思えたのだろう。

「え…あ…。……うん……ごめん、なさい…」

みちるさんは怯え、逃げるように去って行った。

『…君、裁縫はできるのに人付き合いは不器用なタイプ?』
「…そういう訳じゃないさ」

また、少し冷たい声。あまり触れてほしくない領域のようだ。

「それじゃあ僕。もう帰るから」
『んー』

石田さんはさっさと鞄を持って帰ってしまう。

さて、私も帰るか。

『一護いつまで盗み聞き?いや、盗み見?』
「…気づいてたのかよ」
『わかりやすいからね』

ドアから出てくる一護。

『あれ?織姫は?』

織姫も盗み見してたはずだ

「たつきんとこ戻った。…それよりお前、アイツと親しかったのか?」
『いんや全然』
「はぁ?お前言ってることと行動があってな」
『まぁまぁまぁ、それより早く帰りましょーよ。私は嫌なことを忘れるために寝たいんですー』
「ちょ!オイ待て」

さっさと教室を出れば一護も後を追って出てきた。



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