SECOND TIMES

□思い思われ
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【思い思われ】一護episode.

「どうじゃ湯加減は」
「……」

夜一さんと双極(そうきょく)の丘の地下で特訓してから二日が経った。ルキアの処刑は明日の正午…。俺はそれまでに卍解を習得しなきゃならない。だが、俺にはもう一つ、気になることがある…

「おい。儂の言葉を無視するでない」

猫の姿の夜一さんが俺の顔を引っ掻いてくる。って爪!!

「痛っ!?ちょ夜一さん!血!血ィ出てる!!」

夜一さんを剥がし、引っ掛かれた部分を湯船につける。すると直ぐに傷が塞がった。ほんとすげぇよなこの湯…

「で、なにしけた面してんだよ」

目の前で同じようにこのお湯で傷を癒している赤髪。阿散井恋次。こいつも卍解を習得しようとここで特訓していた。

「…別にしてねぇ。つかなんで恋次まで入ってんだよ」
「夜一さんがいいって…」
「どーせなら多いほうが楽しいじゃろ?一護」
「………………。」
「おい。一護」
「え?あ、悪ぃ」

恋次に呼ばれ、はっとする。また俺考えてたのか。

「さっきから何考えてんだよ。…確かに明日の事が気がかりなのは分かるが、今はしっかり休憩しろ。体が持たねぇぞ?入り終わったらまた特訓だ」
「……いや、そのことじゃねぇ」
「はぁ?じゃなんだよ」

恋次の訝しげな顔。なんだよって聞かれても…答えられねぇ。…答えられるはずがねぇ。
だって

「ははーん。椎名のことじゃろ」
「ぶふぉあ!い、いきなり何言い出すんだよ夜一さん!!」
「図星じゃの」

得意気に笑う夜一さん。猫の姿の割りにはそれがよくわかる。…少しイラついた。でも反論は出来るはずがない……そう、図星なのだ。

「椎名って…誰だ?」
「よくぞ聞いた!そいつはのぉ、一護のかの「あああー!!やっぱり温泉は最高だなぁ!!夜一さんも入りましょうよ!」

危ねー危ねー…。恋次が変な勘違いしちゃ困るからな…。

______________
「あ?なんだここ」

浦原さんと修行し始めてからそんなに立ってない頃。いつもは閉まっているはずの戸が開いていた。

「確か……ここは入っちゃダメって言ってたか」

そう、浦原さんに言われたが……気になる。開いてたんだから俺のせいじゃないよね、うん!

「浦原さんが入るなって言う位だし…。恥ずかしい弱味とか隠されてたり」

俺は息を潜めてそっと戸の隙間から中を見た

「…………っ!」

中には女が寝ていた。息は荒く死人みたいな真っ青な顔。枕元には錠剤が散乱していた。それにも驚いたが、それよりも……その女は見覚えのありすぎる奴だった。

「椎名……!」

紛れもない旭椎名だ。

…なんでこいつがここに居る!?しかもあんな状態で…。先日電話したとき椎名は『あー、なんか急に旅したくなった。夏休み終わるまで帰んないから。よろ』って言ってたはずだ。
どうして…

「早々に見つかっちゃったスねぇ…」
「!浦原さんっ!これ、一体どう」
「場所、変えましょうか。…椎名さんを起こしたくはない」
「………」

それから浦原さんは話してくれた。

ルキアが連れてかれたあの夜。現場に浦原さんが行ったときにはもう、椎名は居たらしい。そして、血だらけの俺をゆすって、抱きかかえて…何度も声をかけてたそうだ。
いた、い…?と。

その言葉には聞き覚えがある。
以前、廃病院で警備員に取り押さえられたときもあいつはそう言っていた。

それから浦原さんは俺と一緒に椎名を連れて帰って看病。…そのときから高熱が酷かったそう。

次の日には目を覚ましたのだが、ずっと微熱が引かず特に寝てるときは酷くうなされているのだと。…さっきの様に。
……椎名の体調が良くない兆候はあった…。俺があのとき直ぐに返さなければ……もっと親父に見てもらうように言っていれば…あのとき、大丈夫だと言っていたのは、もしかしたら嘘だったのかもしれない…!
拳に力が入るのが分かった。

「椎名さんには口止めされてましたが……バレちゃっては仕方ありません。アタシもずっと隠しておけるとは思っていませんでしたし」
「…………っ椎名は、大丈夫ですよね」

自分でも驚くくらい弱々しい声だったと思う。浦原さんも驚いたように目を丸くしていた。

「正直、大丈夫…とは言い難い。ただの風邪じゃないのは一目瞭然…どんな病気かアタシも分からないんです」

そう言う浦原さんは俺よりもずっと苦しそうで、悔しそうな顔をしていた。

「でも、無理な運動さえさせなければ血を吐くことはない。彼女も自分の身体のことは分かってたみたいですし……黒崎サンのせいじゃありませんよ」
「…………」
「それよりも今は、己の力を付ける事に集中しましょう黒崎サン」

俺は頷くことが出来なかった
____________



「大丈夫じゃよ」

唐突に夜一さんが言う

「あやつはそんなに貧弱な根性じゃないしな。儂と遊んでたくらいじゃし……血は吐いてたが」

それって、夜一さんのせいで悪化してるんじゃ

「それに椎名は………」

言いかけて黙り混んでしまう夜一さん

「椎名は?」
「いや、儂が言うことではないな。聞かなかった事にしてくれ」
「いや、凄く気になるんですけど!」

椎名は…何だよ!?

ちゃぽん 水の音

…へ?

「さて、一護の言った通り儂も入ろうかのぅ」

夜一さんが入ってくる。人の姿で。……裸で。

「「ぶふぉ!!」」
「おーおー、いい反応じゃ」

俺と恋次が鼻血を出して倒れたのは言うまでもない。






椎名。
俺が帰ったときには少しでも良くなっててくれ……

















『ふぇくしょい!…………風邪かな』


思い思われ 一護episode.end

 

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