SECOND TIMES

□夢入り
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藍染が空の向こう、虚圏(ウェコムンド)へ消えてから直ぐに起きたのは発作。

『っげほっ!ゴホ』
「椎名ちゃん…!!」

近くにいた浮竹隊長が直ぐに支えてくれる。だが、血が止まることも気持ち悪さが収まることもない。
…やっぱり急に力を使いすぎた。前の霊圧に、体がついていけてないと実感。これから筋トレしなくちゃなぁ…めんどい。藍染といい、病気といい、未来はまっくら。

『……っはぁ…』
「…本当に椎名ちゃん…なのか」
『はい……浮竹隊長……』

少しだけ落ち着いてきた。

『正真正銘、旭椎名です』
「……聞きたいことはたくさんあるが…。今は休んでくれ」

浮竹隊長は微笑む。その微笑みに頷く。私も流石に疲れた。

周りを見ると、四番隊の者たちが怪我人の治療に世話しなく動いている。
旅客…一護たちにもちゃんとついてる様だ。安心安心。

あー、これからやらなきゃいけないことがたくさん。盛りだくさん。まずは、総隊長…元柳斎さんのとこにいかないとな…説明めんどうだな。絶対怒られんじゃん。

『はぁ………』
「なぁに溜め息ついてんの」
『…京楽隊長』

隣に座るのは八番隊隊長、京楽春水。相変わらずの、はでな羽織。それから笠。

「元気そうだね…」
『元気そうに見えますか?』
「少なくとも…僕が覚えてる椎名ちゃんの姿よりかは」

それって、血塗れの姿でしょうが。それと比べられるって、普段の私はどんだけ根倉だ。

『京楽隊長はお手伝いしないんですか』
「ボクがするよりも、四番隊の人に任せた方がいいでしょ」
『それもそうですね』
「え?なんかそれ酷くない?」

酷くないです。と言い、その場にねっころがる。藍染のことがあり、怪我人もたくさん出ている中でも、空は青い。それこそ、地上の私たちなど眼中にないように。ただ、ただ青く眩しい。

「あーあー、汚れちゃうよ?」
『どうってことない』
「…ま、それもそ、か」

すると京楽隊長も私の横にねっころがる。マネか。
京楽隊長の横顔を盗み見る。私と同じく空を見ているよう。

「……ん?なにかな」
『いえ、老けたなーと』
「老けっ!?ちょ、流石に傷つくって」
『ははは、冗談ですよ。京楽隊長はあまり変わりませんね』
「…それはそれでどうかと…。それに、ボクからしたら椎名ちゃんの方が変わってないでしょ?」
『それもそうですね』

私の姿は変わらない。

ん?京楽隊長に影がかかる。
誰かが来たよう。見ると黒髪の眼鏡の女性。

「…隊長。なにのんびりしているんですか」
「!…七緒ちゃん。…もう、大丈夫なのかい」
「当たり前じゃないですか。…こんな時に怪我もしてないのに寝てられませんから」
「……そう。ならよかった」

京楽隊長はほっとしたように息をつく。どうやらこの女性は八番隊の副隊長のようだ。腕に副官章をつけている。

「………!」

女性が私を見て目を見開く。

「隊長っ!この方は」
「そっか…七緒ちゃんは当時ボクの隊にいたから知ってるのか」

当時京楽隊長の隊にいたとなると、この女性はまだ幼いはず。……そんな子いたっけな…。あ、いや

『……もしかしてあのときの八番隊の一番若い子って』
「この子。伊勢七緒ちゃん」

そーだったのか。やっと今分かった。
伊勢さんは私に軽く頭を下げる。なので、私も寝たままだが顎を下げ軽くお辞儀。

『ふぁあ…眠い』
「ボクもなんだか眠たくなってきちゃった。…このまま寝ちゃおっか椎名ちゃん」
『そーですねぇ』
「何言ってるんですか隊長。と…旭、隊長。周りを見てください。サボっているのはあなたたちだけです」
『伊勢さんもサボってるよ〜』
「わ、私はお二人に言っている立場ですからサボりではありません!」

伊勢さんはそう言うが、伊勢さん自体も少し無理をしているようだった。目立った怪我はないが、疲れているみたい。何かがあったのは明白。なら、

『伊勢さんも寝ましょうよ』
「はい?」

驚いたように聞き返す伊勢さん

「そうそう。七緒ちゃんはいつも働きすぎ。たまにはこうやって空でも眺めなさいよ」
「あのですね。…普段働きすぎなのは隊長がふらっとどこかにいってしまうからであって」
「あーボクもそろそろ働こうかなぁ」

伊勢さんの愚痴が始まると共に京楽隊長は起き上がる。嫌なことは聞かないタイプ。私と同じだ。

「椎名ちゃんはまだここにいるのかい?」
『はい。本格的に寝ようかと』
「そっか………。後で八番隊に遊びにおいで、美味しいお菓子用意しておくから」
『マジですか。絶対行きます』

真剣に言ったら笑われた。なぜだ。

「それじゃ」

ひらひらと手を振る京楽隊長と、しっかりと頭を下げる伊勢さんに軽く会釈し、また空を見上げる。

前にもこうやって空を見上げるのが日課だった記憶がある。
そのときは……あの子も隣に……。

やっぱりここにいないと言うことは………死んだ、のか。

死神だって万能じゃない、必ず死はやってくるもの。

そう、分かっていても。

『やっぱり……悲しい』

顔を歪め、眠りに落ちた。


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