SECOND TIMES

□気づいた者
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「あ、椎名ちゃん」
『まだ寝てなかったんだ』

織姫宅に戻ると、織姫は窓の外を見ていた。

「椎名ちゃん…これって」

織姫も感じるのだろう、この霊圧を。横顔はとても不安げだ。そんな織姫の頭をぽんと撫でる。

『心配無用。私が行ってくる』
「え!?あ、危ないし私も行く!」
『織姫は家でお留守番。寝る子は育つ、肌にも悪いぞー』
「そ、それを言ったら椎名ちゃんだって!」
『はいはい、んじゃ』
「あ、ちょっと!」

瞬歩で消える。

近くのビルの屋上まで移動して止まる。それから集中。
…大きな霊圧が点々としてる。さて、何処に行くべきか…。

『……単純に近場でいっか』

そうと決まれば移動開始。

段々と近づく大きな二つの霊圧。一つは大虚。もう一つは……知らない。

『…死神?』

着くと、丁度大虚が倒されようとするところだった。その、死神によって。………アレ?なんか見覚えがある。顔は大虚のせいではっきりとは分からないけど……あれは、一護の父親…?

というか、後ろに居るの…一護、か。いや、でもなんか違う…でも覚えがある。

それに、あの大虚。話せるようだ。くそ、顔さえ見れれば判断がつくのに…

「椎名さん♪」
『うおぁ!』

いきなりの耳元での声。思わず変な声が出た。相手を確認、みどりの縦じまが見えた。

『…き、喜助さん』
「覗き見っスか?アタシと一緒っスね!」
『一緒にしないでください…』

アタシと一緒、ということは喜助さんもこの光景を見ていたということ。

何か知ってるのか? と聞く前に

「討てましたか?仇」

浦原さんは隠れていたというのに出ていく。それに吊られ…いや正確には喜助さんに引っ張られた私も姿を晒すことになる。

おいおい。何やってんのよ。しかも、仇?いつのまにか大虚居ないし…。

「…来てたのか…浦原…それに椎名ちゃん…」
「…お久し振りっス…一心サン」
『え?知り合い?』

まさかの知り合いとは…。
それから近づいて確定したが、やはり一護の父親で間違いないようだ。それに後ろの一護は一護じゃない。

「いやァ腕は鈍ってないみたいっスねぇー、安心しました」
「なんだァ?えらくマトモなこと言うじゃねえか」
「そりゃもう♪霊圧シボんでてアタシのせいにされちゃたまんないんで」
「あーそうかい。心配すんな、別にシボんでてもオメーのせいにゃしねえよ。それも含めて俺の実力だ」

二人は親しい仲のよう。…なにこの疎外感。私なんで出てきたの。そしてなぜ未だに手を離さない、喜助さん。離そうとすればするほど強く握る喜助さん。いじめか?

「…どっスか?二十年ぶりの死神の体は」
「まあまあだ」
「…心は……晴れましたか?」
「…まあまあだ」

二十年ぶり……もしや私と同じように…いや、考えすぎか。

『………で、あのー。状況説明してもらっても?』
「……俺の読みは合ってたみてえだ」
『はい?』
「お会いできて光栄だ。元十番隊隊長旭椎名さん」

そこで私は目を見開く。

『…どゆこと?』
「俺も元十番隊長なんだよ、と言っても旭隊長の随分後になるけどな」

えええマジですか。まさかの元十番隊隊長…。確かによく見れば肩にかかっている白い布は隊長羽織。…でも何で知って、と言いかけて止める。私の写真でも見たんだろう。それくらいは資料にあるはずだ。

『名前は』
「黒崎一心だ」
『一心さん、か。今まで通り、私のことは椎名で』
「分かった」

軽く握手する。その手には確かにマメがついていた。メスじゃこうはいかないだろう。剣を握る証だ。

一心さん、一護の父親は死神…つまり一護は真血。なら、あの霊圧の強さも納得か。でもなぜ。
一心さんにそんなそぶりはなかったし。…元十番隊隊長というならばなぜここにいる。…まぁ私も人のことは言えないが。
考えることはたくさんあるが、今はいいか。

『さっきの大虚は?』
「"破面(アランカル)"」
『破面!?』

一心さんの言葉に目を見開く。
破面は確か、虚の中でも希に現れる奇行種のようなものだ。白い仮面を自ら外したもの…または何らかの原因で外れたもの。
どちらにせよ、さっきの破面は今まで見てきたものとはレベルが違う。

『でもあんなにまともに話せるのなんて』
「あァ、今迄に見た破面もどき共とは完成度はまるで別物だ。何十年も進歩の無かった破面もどき共のレベルが、ハネ上がってんだよここへきていきなりな」
『それはつまり…誰かが意図的に?』
「ああ」

私の答えに一心さんは深く頷く。
そんなことする奴はアイツしかいない。

『藍染、か』
「…ああ」

拳に力が入る。すると隣の喜助さんが不安げにこちらを見た。…ああ、まだ手を握られたままだったか。少しだけ落ち着くと、拳を緩める。

「あいつが"破面"もどき共に接触し、真の"破面"を創り出そうとしてるってことだ。"崩玉"の力を使ってな」

崩玉…。浦原喜助が生み出してしまったとんでもない産物。多分、町の一つや二つ消せるんだろう。
尚も一心さんは続ける。

「レベルはハネ上がったが霊圧の濁り具合で判る。あの破面はまだ未完成だった。恐らくは"このレベルでどの程度戦えるか"ってデータ集めの為に出してきた試作品だ」

実験、か。今もどこかで藍染はこの光景を見ているのだろうか。嫌な笑みが頭に浮かんだ。

「今でこそあのレベルだが、"崩玉"の力は絶大だ。奴はすぐに研究を終えるぜ。そして完成した真の"破面"と大虚の軍勢を従えて」

"世界を潰しに現れる"

そう一心さんは言う。世界を潰しに…藍染ならやるだろう。己の高みの為に。



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