SECOND TIMES

□気づいた者
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「…どうする」

一心さんが聞く。

「…なんとかしましょ。いずれにしろこの事態だ。敵味方はともかくとして、みんな動きますよ。"仮面の軍勢(ヴァイザード)"もアタシ達も、そしてー尸魂界も」

喜助さんの握る手の力が強くなる。


…ん?知らない単語が一つ。


『ヴァイザード?』
「ああ、椎名さんは知らないんスね」

微笑む喜助さんが少し憎たらしい。

「禁術を使って虚の能力を手にしようとした元死神の無法集団。所在も思想も一切不明。厄介な奴だ」
『元死神ねぇ』
「………」
『喜助さん?』
「いえ…一心サンの説明の通りですよ」

喜助さんの顔が若干陰った気がしたのだが……気のせいか?

「その仮面の軍勢が、黒崎サンに接触してきたんスよ」
『一護に?仕掛けてきたのか?』
「さァ…はっきりとは分かりかねますが、どちらかというと勧誘ですかね」
『勧誘…仮面の軍勢に?一護が』
「はい」

浮かぶ言葉は何で?なのだが。喜助さんに聞いても仕方がないのは重々承知。

仮面の軍勢に破面か…なんだか大事だな

『で、その後ろのは』

私が指差すのはずっと気になっていた一護もどき。義魂丸だと思ったのだが…ちょっと違う。

「ひ、姫!?」
『…姫?』
「忘れたのか!?俺だよ俺、あんたにあっついキ『あーはいはい今思い出したんでとりあえず口閉じましょうか』むぐっ!」

無理矢理一護もどきを黙らせる。二人が不思議な目で見ているが気にしない。…危ない危ない。こんなこと喜助さんに聞かれてみろ。弱み握られる。

ずっと口を締めていたら苦しいのか降参を示したので解放してやる。

「はぁっ!こ、殺す気かよ…」

どうやらあの時一護の体に入っていた奴で間違いないみたいだ。

『…まだ返してないのか…それともまた借りてる?』
「違う違う!ちゃんと許可取ってるっつーか一護から頼まれてることだし!だからそんな目でみるなっ!あ、でもそんな目もまた…」

普段の一護ならまずしないだろう格好で体をくねらせる一護もどき。…なんか見ていてやだな。一護らしくない行動が変。てか動きが気持ち悪い。なので

『くねくねすんな一護もどき』
「い゛っ!」

とりあえず一発腹に入れてやった。あ、これ一護の体だけど…まいっか。

「俺、は!コンだ!!一護もどきじゃねぇ!」
『コン?ああ、もしかして魂でコンか』
「!よ、よく分かったな」

ネーミングセンスがあるんだかないんだか。

「あ、コンさん」

喜助さんがコンに近づく。
そしてイヤーな笑みを浮かべる。コンの額に汗が流れた。

「今日見たことはみィ〜んな当然他言無用っスよ♥」
「は、はひっ!」
『やぶったら?』
「さァて……残るのは綿とフェルトっスかね」
『綿と…フェルト?』

何を言ってるのか分からないがコンにはそれで十分だったようだ。顔が真っ青になって震え上がっている。

「それじゃ、コンさんはもう家に帰った方がいいかと」
「一護がこっちに向かってる。俺たちも解散だな」
「お、おう!」

コンが真っ先に走っていく。そんなに怖かったのか綿とフェルトが。

「んじゃ俺も。今、一護と顔合わせたくねーからな」

確かにいきなり父親が死神だったらびっくりだろう。

「それじゃ椎名ちゃんまたな。あ、一護をよろしくな」
『はい』

最後の笑みが謎だったがとりあえず頷く。

『……で喜助さん』
「はい?」
『…さっきコンの時に手離しましたよね?なんでまた掴んでるんですか』
「若い子の肌はいいっスねぇスベスベで」
『変態』

無理矢理手を離す。離された本人は至ってにこにこ。変態か。

『私も帰ります。雨ちゃんによろしく伝えといてください、愛してるでもいいですけど』
「相変わらず雨LOVEっスねぇ。アタシそろそろ引きますよ?」
『引かないでください。喜助さんが引いたらほんとにヤバイんで』
「酷くないスか?」

酷くないです、と言い来た道を戻る。早くしないとほんとに一護と合う。それはめんどくさいので回避したい。

「椎名さん」
『…もう何ですか。用件は一回にまとめてください』

後ろからかかる声に若干うっとうしくも振り替える。そんな私の顔に喜助さんは笑っている。それがまたイラっときた。

「気を付けてくださいよ。…貴女は色んな意味で藍染のお気に入りなんスから」

喜助さんが真面目な顔で言う。

『ハハハ…お気に入りか。そりぁ嬉しい限りで。それ、私が一番藍染に近い場所に行けるってことですよね』

怯むことは何一つない。近づいて首に牙を立てればいい。それだけだ。

「…相変わらずっスねその思考。まァ椎名さんらしいスけど」
『だから椎名でいいですって』

今度こそ織姫宅へと足を進ませる。静止の声はかからなかった。

『…織姫、多分寝ないで待ってんだろうな』

少しだけ想像して頬が緩む。待っている存在がいるのはこんなに嬉しいものなのか。

早く帰ろう。









椎名の行った先を暫く見つめてから自分も帰ろうと足を向ける。

「…"色んな"意味って言ったんスけどねぇ…多分伝わってないか…」

藍染は椎名をずっと見ている。表立って口にすることはないが、目はいつも椎名を追っていた。それが分かるのは…アタシも椎名さんを追っていたから。

藍染は多分椎名の力目当てだけではない。椎名という存在全て己のものにしたいのだろう。

「次はアタシの番っスね」

アタシが貴女を守る番だ



「?」

瞬間 何かの視線を感じ振り向く。

が、誰も居ない。

「気のせいっスかね…」

どちらにせよ敵意はなかった。大丈夫だろうと思い歩き出す。










「…ひよ里…」

男は屋根の上で誰かに電話をかける。電話の向こうからは大きな声が聞こえる。

「違う……それどころやない」

相手の声も聞かず、男は携帯を切る。それから携帯を手に握りしめる。

「……ハハハ…あんたの言う通りや」

男は携帯についている紐を撫でる。それはもうところどころ解れている。
その紐の輪に指を入れ下に下げると、するりと自然に紐が切れた。

「願ってみるもんやな…」

それから直ぐに男は消えた。


→おまけ+あとがき

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