碧に染まって IF
□パラレル
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▽もしも探偵世界に飛んでしまったらの話。(冒頭のみ)
ただ、書きたかった。
主人公自体は原作を知ってますが、この話では忘れてる設定。
所謂ご都合主義。
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甘い香りがした。
蜂蜜に近い、濃い匂い。
目を開く。青空が広がっていた。
……青空、ね。
記憶が確かなら今日はクロロのところで寝たはずなんだけれど…。しかし目が覚めて違う光景なのは最早慣れている。また誰かのイタズラだろうか。
「わぁあ!」
声が聞こえそちらに目線を移す。6、7歳くらいの少女がこちらを見ていた。
「お姉さんまるで妖精みたい!」
『……妖精?』
初めて言われる表現だな、と思いながら体を起こす。………ん?
起こしてからその色とりどりのものに気がつく。
「だってお花畑のなかで寝てるなんておとぎ話みたいなんだもん!それに…お姉さんとってもきれい!」
少女の言うとおり、私の周囲には千差万別、様々な色彩の小さな花。…通りで甘い匂いがするとおもった。しかし、どうしてこんなところに。
『君…私をここに連れてきた人…見てない?』
「?歩実はみてないよ?お姉さんだれかにつれてこられたの?」
『ああ、いや。知らないのならいいんだ』
…こんなところに私を放って、拐った犯人は何を企んでいるんだか。この時点で私の知り合いではないと予想する。
………私をクロロの所から拐ったのなら念か…。クロロの実力は分かっている。いくら就寝中でも侵入者には気づくだろう。
『…………あれ』
思わず目をぱちぱちする。…もう一度試すが出来ない。もう、一度…
「お姉さん?」
少女が疑問顔で覗き込んでくる。それにさえ反応が遅れた。
「っ歩実!」
「あ!コナンくんの声だ!」
円が…出来なくなっていた。自分の手を見つめる。…微かに手に纏っているオーラが見えた。念が使えなくなった訳ではないらしい。けれどいつものようではない。…円を行うほどのオーラが練れない。オーラ量が減っている…?
犯人の念の能力…だろうか。相手のオーラ量の制限。……あり得なくはない。正直、使い勝手が良いかは疑問だが。…その場合だと操作系か。もしくは特質系。
「!まったく、勝手にどこいってた、…!?」
近づいてきた気配を感じて顔をあげる。…今度は6歳位の少年が居た。少年は私を見て驚愕の表情をしている。
「コナンくん。あのね、このお姉さんここの花壇で寝てたの。だから歩実気になって声かけたんだ」
正確には寝かされた、だけれど。少女は少年に説明する。それによって少年ははっと意識を戻した。
「…お姉さん。どうしてこんなところで寝てるの?」
可愛らしい声でそう尋ねられる。
『さぁ、私にもわからないんだ』
「わからない…?」
『うん』
正直に頷く。出来ればここが何処なのかを早く聞いて、クロロの元に戻りたい。
「記憶喪失?」
『いや…あー、否定は出来ないかな。どうしてここに居るのかはわからないし。でも自分の名前とかは分かる。ここが何処なのかは分からないけど…』
「ここは今日オープンしたばっかりの米花フラワーパークなんだよ!」
『米花フラワーパーク?』
辺りを見渡す。…ここの他にもたくさんの花壇。人もそれなりに居た。時々こちらに視線が飛ぶ。……花壇で寝ていたらそりゃあ目立つか。
「お姉さん、外国の人?」
少年の質問に頷く。私に国籍はないから間違ってはいないだろう。
「へぇ、日本語じょうずだね!」
…………。
『…え?』
少年の言葉に耳を疑った。
にほんご、日本語…。
少年は今、そう言った。
さぁ、と血が引く感じがする。私の顔は青いに違いない。
『…ねぇ、ここ…日本…なの』
出した声は掠れていた。手が震えないように握りしめる。私は少年の言葉をじっと待つ。
「そうだけど…」
……嘘、だろ。
どうして。
思わず顔を下に向ける。その振動で私の髪がはらりと降りてきた。金色の髪が。……金色。
「…お姉さん。どこかいたいの?」
少女が心配そうな顔で覗き込んでくる。それに顔を上げる。
『……いや、大丈夫。だからそんな顔をしないで』
少女の頭をそっと撫でる。少女は恥ずかしそうにうつむいた。それが可愛らしい。
…金色。そうだ、私はまだノアのまま。それに……仮にここが私の知る日本だとしたら、私の死んだ事実はどうなる。それに、これが念による攻撃だとも考えられなくない。
攻撃されているのなら冷静を保たなければ。…私のこの状況を何処かで見ているのかもしれない。私は、人形になる気はない。
「と、とりあえず移動しようよ。お姉さんさっきから目立ってるから」
『……そうだね。分かった』
奇異な目が先程よりも増えている。
私は少年の言葉に頷くと、花をなるべく潰さないように柵を越えて二人の前に降り立つ。振り返ると私の体形に花が萎れていた。……これ、管理人のような人に怒られないといいけど。
「あ!お姉さん裸足だよ!」
『うん』
記憶が正しければ私は就寝中だった。服装は寝巻きで裸足。寝巻きには花壇でついたであろう土がついていた。軽く払う。
『問題ない。それよりここから離れた方がいいでしょう?』
私は少女の頭に手を置きなだめるように微笑む。少年は何か言いたそうだったが、ここにいるのもよくないと思ったのか「こっち」と私を誘導する。
……ここが例え私の知っている日本だとしても、私がノアである限りは"移動した"もしくは"転移した"と考えるべきだろう。
それが分かれば問題ない。念の中にはそういったものもある。つまり"帰れない"訳じゃない。方法はある。
『………』
空になったベッドを見てクロロがどんな表情をしているか……想像すると心臓を捕まれたように息が苦しくなる。
帰らないと。
何をしても、必ず。
私は二人の小さな背中を追いながら、そう決意した。
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探偵世界に念能力者をぶっこんだらパワーバランス凄いことになりそう。確実に地球上で一番強いのは彼女に間違いない。それに気づいた人たちはどんな反応をするんだろう。