碧に染まって IF

□パラレル
1ページ/1ページ

▽もしも探偵世界に飛んでしまったらの話。(冒頭のみ)

ただ、書きたかった。
主人公自体は原作を知ってますが、この話では忘れてる設定。
所謂ご都合主義。

_______

甘い香りがした。
蜂蜜に近い、濃い匂い。

目を開く。青空が広がっていた。

……青空、ね。

記憶が確かなら今日はクロロのところで寝たはずなんだけれど…。しかし目が覚めて違う光景なのは最早慣れている。また誰かのイタズラだろうか。

「わぁあ!」

声が聞こえそちらに目線を移す。6、7歳くらいの少女がこちらを見ていた。

「お姉さんまるで妖精みたい!」
『……妖精?』

初めて言われる表現だな、と思いながら体を起こす。………ん?
起こしてからその色とりどりのものに気がつく。

「だってお花畑のなかで寝てるなんておとぎ話みたいなんだもん!それに…お姉さんとってもきれい!」

少女の言うとおり、私の周囲には千差万別、様々な色彩の小さな花。…通りで甘い匂いがするとおもった。しかし、どうしてこんなところに。

『君…私をここに連れてきた人…見てない?』
「?歩実はみてないよ?お姉さんだれかにつれてこられたの?」
『ああ、いや。知らないのならいいんだ』

…こんなところに私を放って、拐った犯人は何を企んでいるんだか。この時点で私の知り合いではないと予想する。

………私をクロロの所から拐ったのなら念か…。クロロの実力は分かっている。いくら就寝中でも侵入者には気づくだろう。

『…………あれ』

思わず目をぱちぱちする。…もう一度試すが出来ない。もう、一度…

「お姉さん?」

少女が疑問顔で覗き込んでくる。それにさえ反応が遅れた。

「っ歩実!」
「あ!コナンくんの声だ!」

円が…出来なくなっていた。自分の手を見つめる。…微かに手に纏っているオーラが見えた。念が使えなくなった訳ではないらしい。けれどいつものようではない。…円を行うほどのオーラが練れない。オーラ量が減っている…?

犯人の念の能力…だろうか。相手のオーラ量の制限。……あり得なくはない。正直、使い勝手が良いかは疑問だが。…その場合だと操作系か。もしくは特質系。

「!まったく、勝手にどこいってた、…!?」

近づいてきた気配を感じて顔をあげる。…今度は6歳位の少年が居た。少年は私を見て驚愕の表情をしている。

「コナンくん。あのね、このお姉さんここの花壇で寝てたの。だから歩実気になって声かけたんだ」

正確には寝かされた、だけれど。少女は少年に説明する。それによって少年ははっと意識を戻した。

「…お姉さん。どうしてこんなところで寝てるの?」

可愛らしい声でそう尋ねられる。

『さぁ、私にもわからないんだ』
「わからない…?」
『うん』

正直に頷く。出来ればここが何処なのかを早く聞いて、クロロの元に戻りたい。

「記憶喪失?」
『いや…あー、否定は出来ないかな。どうしてここに居るのかはわからないし。でも自分の名前とかは分かる。ここが何処なのかは分からないけど…』
「ここは今日オープンしたばっかりの米花フラワーパークなんだよ!」
『米花フラワーパーク?』

辺りを見渡す。…ここの他にもたくさんの花壇。人もそれなりに居た。時々こちらに視線が飛ぶ。……花壇で寝ていたらそりゃあ目立つか。

「お姉さん、外国の人?」

少年の質問に頷く。私に国籍はないから間違ってはいないだろう。

「へぇ、日本語じょうずだね!」

…………。

『…え?』

少年の言葉に耳を疑った。

にほんご、日本語…。

少年は今、そう言った。

さぁ、と血が引く感じがする。私の顔は青いに違いない。

『…ねぇ、ここ…日本…なの』

出した声は掠れていた。手が震えないように握りしめる。私は少年の言葉をじっと待つ。

「そうだけど…」

……嘘、だろ。

どうして。

思わず顔を下に向ける。その振動で私の髪がはらりと降りてきた。金色の髪が。……金色。

「…お姉さん。どこかいたいの?」

少女が心配そうな顔で覗き込んでくる。それに顔を上げる。

『……いや、大丈夫。だからそんな顔をしないで』

少女の頭をそっと撫でる。少女は恥ずかしそうにうつむいた。それが可愛らしい。

…金色。そうだ、私はまだノアのまま。それに……仮にここが私の知る日本だとしたら、私の死んだ事実はどうなる。それに、これが念による攻撃だとも考えられなくない。

攻撃されているのなら冷静を保たなければ。…私のこの状況を何処かで見ているのかもしれない。私は、人形になる気はない。

「と、とりあえず移動しようよ。お姉さんさっきから目立ってるから」
『……そうだね。分かった』

奇異な目が先程よりも増えている。
私は少年の言葉に頷くと、花をなるべく潰さないように柵を越えて二人の前に降り立つ。振り返ると私の体形に花が萎れていた。……これ、管理人のような人に怒られないといいけど。

「あ!お姉さん裸足だよ!」
『うん』

記憶が正しければ私は就寝中だった。服装は寝巻きで裸足。寝巻きには花壇でついたであろう土がついていた。軽く払う。

『問題ない。それよりここから離れた方がいいでしょう?』

私は少女の頭に手を置きなだめるように微笑む。少年は何か言いたそうだったが、ここにいるのもよくないと思ったのか「こっち」と私を誘導する。

……ここが例え私の知っている日本だとしても、私がノアである限りは"移動した"もしくは"転移した"と考えるべきだろう。

それが分かれば問題ない。念の中にはそういったものもある。つまり"帰れない"訳じゃない。方法はある。

『………』

空になったベッドを見てクロロがどんな表情をしているか……想像すると心臓を捕まれたように息が苦しくなる。

帰らないと。

何をしても、必ず。

私は二人の小さな背中を追いながら、そう決意した。


_____

探偵世界に念能力者をぶっこんだらパワーバランス凄いことになりそう。確実に地球上で一番強いのは彼女に間違いない。それに気づいた人たちはどんな反応をするんだろう。



 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ