碧に染まって IF
□脳ミソちょうだいお姉ちゃん
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▽アルカとノアの話。
ノアならアルカのおねだりは楽勝だろうなぁ、と思って。
設定はご都合主義なので気にしないでください。
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「ノアお姉ちゃん!!」
扉が開くと私を見つけた小さな瞳が喜びに変わる。それから、こちらまで走ってくると腰辺りに抱きついた。
私はその頭に手を乗せる。
『久しぶり、アルカ。なかなかこれなくてごめんね』
「ううん!だいじょうぶ!…うふふ、お姉ちゃんあったかい…」
私は微笑んでアルカを連れたまま部屋の奥へ移動する。
この子はアルカ。ゾルディック家の4男であり、キルアの妹でカルトの兄らしい。…しかし、シルバさんの話では"男の子"らしいけど、私には女の子にしか見えなかった。服装も女の子のものだし……でもカルトも女の子の服着させられてるしな。
アルカはゾルディック家の奥の奥で幽閉されている。…監禁と言ってもいい。それはアルカの能力ゆえだった。
アルカの中にはもう一人"闇"がいる。それが一体どこから来たものなのかわかっていないらしい。ただ、その"なにか"の能力が危険なものだった。
「ノアー、もっと抱きしめてぇ」
『うん、いいよ』
膝を曲げてアルカと目を合わせてぎゅう、と抱き締める。…可愛いなぁアルカは。
でれでれとするアルカの表情に私もでれでれしてしまう。
「ノア、名前よんで」
『いいよ。…アルカ、アルカは可愛いね』
「えへへへ」
ふにゃ、と溶けたようなアルカに私の頬も緩んでいく。…はぁ、これ見られてるんだよなぁ。
部屋に設置された監視カメラを見て、ややため息をついた。
「ノアーお人形遊びしよー!」
『いいよ』
渡された猫のような人形を手に取る。そして、お互いの人形を動かしながらお話ししていく。…アルカは好奇心旺盛で、優しい子だ。だけどアルカには能力がある。
暫くお人形遊びをして、やがてアルカの手が止まる。
アルカの目は黒い穴のように真っ黒に染まっていた。…これがアルカの中のもう一人。
…さて、私がここに呼ばれたのはこの状態のアルカにお願いをするためだ。
『アルカ、ミルキに最新式のパソコンをあげて』
「…あい」
そう、アルカは答えると瞳が元に戻る。
アルカの"おねだり"を三回聞くと、こちらの"お願い"をひとつ叶えてくれる。しかもお願いの内容にはおそらく限界がないらしい。
念能力かと思えばそうではない。……確かに、アルカは特別なオーラをまとってはいなかった。
だから"なにか"なんだと言っていた。
〈サンキューノア!!じゃ、親父たち帰ってくる前に扉あけるから…〉
機嫌の良いミルキの声に息をつく。…本当に調子がいいんだから。
聞けばわかる通り、ここにはミルキに頼まれてきた。"オレの代わりにアルカにお願いして欲しい"と。…まぁ、アルカに会えるからいいんだけど。私が代わったとして、どのみちシルバさんたちにはバレるだろうなぁ。
パソコンくらい私が買ってあげると言えば、ミルキが欲しいのは普通に売ってるものではないらしい。そうなると、確かに難しいかもしれない。……でも、わざわざアルカに頼まなくったって。
『ごめんね、アルカ。そろそろ行かないといけないみたい』
心苦しいが、アルカの頭を撫でて立ち上がる。……その裾を捕まれた。
「ノアー、小指の爪ちょうだい」
『!』
これは"おねだり"だった。
アルカの能力が危険な理由。それは制限なくお願いを叶えることができる、というのもそうだが"おねだり"にある。
三回おねだりを聞いてお願いをすると、また次のおねだりが始まる。…ただ、その難易度は前回のお願いと等価交換。つまりお願いが無理難題であるほど、次のおねだりの難易度も上がるのだ。
過去にゾルディック家の執事が「億万長者にしてほしい」とお願いをしたらしい。その次のおねだりは、肝臓を欲しがったり脳ミソを欲しがったり、と死に直結するようなものだった。
そして、当然叶えることができなかった執事は得たいのしれない力に捻り潰された…らしい。つまり叶えることができないとしても、死ぬ。それも死ぬのは当人だけではなく、当人と最も親しい人間も一緒に死ぬ。それプラス、お願いが大きいほど、当人と長い時間を過ごした人間も更に同時に死ぬ。
億万長者の時はわかっているだけでも67人が死んだらしい。
ただ、私が驚いているのはおねだりの難易度じゃない。
大前提として、お願いをした人物に同じくおねだりをすることはできない。しかし、アルカは私におねだりをしている。
…私もアルカのようにもう一人がいるし…もしかしたらそれのせいかもしれない。自分は普通の人間ではないので、イレギュラーはわかる。
〈げ…なんで。…ノア、とりあえずひとつ叶えて出てこい。それで暫く会わなきゃいい〉
アルカがおねだりをする相手は三回叶えるまで代えることができない。…私がひとつ叶えてから離れてしまえばいいのだ。でも、それだと……暫くアルカに会えなくなってしまう。
…もし、私の中のもう一人を見ているならこれを叶えたらもう私におねだりはしてこない。……そしたら普通に遊べる。
『うん。いいよ』
小指をぺり、と剥がしてアルカの手に乗せる。…おねだりとはいえこんなものアルカにあげるのはいけないのだけど。
「ノア、奥歯ちょうだい」
奥歯かぁ…なるべく血がつかないようにしよう。
『はい、どうぞ』
気が引けるがアルカの手に乗せる。…はやくゴミ箱にぽいってしてほしい。
…次で最後だ。
「ノア、皮膚ちょうだい」
『え、皮膚?』
皮膚はもろに血がべっとりつくだろう……アルカの手を汚したくない。
『ごめん、他にあるかな』
「じゃあノアー、髪の毛ちょうだい」
『それならお安いご用だよ』
ナイフを取り出して一房切ってアルカの手に乗せる。…するとアルカの目が黒くなる。
『手に乗ってるものを部屋のゴミ箱に捨てて』
「あい」
アルカは部屋の隅にあるゴミ箱に私の爪と奥歯と髪の毛を捨てると早足でこちらに戻ってくる。
「ノアー!つぎなにして遊ぶー?」
いつもの瞳に戻ったアルカは私の腰に抱きついてくる。
『ふふ…今日は1日アルカに付き合うよ』
「やったー!!」
私はシルバさんが帰ってくるまでアルカと遊び、ミルキはシルバさんに怒られていた。
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本当は十二指腸とかをあげたかったですが、話の流れが思い付きませんでした。それにグロくなりそうだったのでやめました。
ノアは例え、十二指腸でも肝臓でも脳ミソでも頼まれたら何でもできます。
なので難易度の高いおねだりは全部ノアに頼んでしまえばいいのです。
因みにアルカは「ノアお姉ちゃん」、ナニカは「ノア」と呼びますが、基本的にナニカしか出てきません。
アルカよりナニカの方がノアのことが大好きなんですね。
その理由はありますが、特に本編でも触れないので私の中だけの設定です。