愛する世界に変革を

□少年
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「ねぇ、アンタ何やってんの」

ふとそんな声が頭上から聞こえ、目を開けて相手を見る。


…………マジか


『……ども』

動揺を悟られないようにとりあえず挨拶してみる。

「ども、じゃなくてオレの質問に答えてよ」

眉間に皺を寄せて私を見る。直ぐに答えなかったからか、機嫌を悪くさせてしまった様だ。

『寝てる…いや、今起きたんだから寝てた、か』
「それは見れば分かるって。そうじゃなくて、なんでこんなところで寝てたのか聞いてんだけど」

更に不機嫌になった声。

確かにここは道端。加えて"あの"定食屋さんの前。

周囲の人たちもちらほらと私を訝しげに見ていた。

『あー、試験受けにきたんだけど店が開く前に来ちゃって。寝てたんです』

ハンター試験とは言えないのでオブラートに包んでみると、流石に察したようだ。

「…ふーんアンタも受けるんだ」
『そう言うってことは少年も』
「まぁね」

と得意気な笑みを浮かべる銀髪の彼…キルアを見る。
起こしてくれたのはありがたいが、まさかいきなり主要キャラに会うとは…。

念のため大きめなパーカーのフードを被ってて助かった。もし被ってなかったら、私の驚きと戸惑いとニヤけた表情を見られていただろう。

「オレ、キルア」
『私はシーナ。よろしく、キルア』

私は立ち上がってキルアと握手する。……手汗大丈夫だよな。うん、問題ない。

『起こしてくれてありがとう。危うく試験受けられないところでした』
「あ、いや別に俺が気になっただけだし」

お礼を言うと少し驚きながらも返事をするキルア。そんな様子に少しだけ笑みが漏れる。


「いらっしゃい!!」

定食屋に入ると威勢の良い声。

「御注文は?」
「ステーキ定食」

キルアが答えると予想通り店長の耳がピク、と動く。

「焼き方は?」
「弱火でじっくり」
「あいよ…お隣も?」
『はい。同じものを』
「奥の部屋へどうぞ」

店員の指示に従い奥へ進み、部屋へ入る。店員はドア横にあるスイッチを捻り、出ていった。

小さく機械音が聞こえる。

「へぇ、部屋がエレベーターみたいになってんだな」
『そうみたいです』

キルアの言葉に頷き、用意されている椅子にそれぞれ座る。

ジュー…ジュー…

目の前の鉄板には美味しそうなお肉が。…よく考えてみると朝から水以外何も口にしていない。

『これ、食べていいんだよね』
「いーんだろ。早く食おうぜ」

キルアはさっそくナイフとフォークを持ちステーキを食べる。
それを眺めてから私も遠慮なく口に運ぶ。……うん、旨い。噛む度に肉汁が出てきて幸せだ。

「なぁ」
『?』

肉の余韻に浸っていると声をかけられたのでキルアを見る。

「フード、取らねーの?」

頭を指される。そういや被りっぱなしだった。流石に食事中は失礼だったかな。

『ごめん。…これでいいかな』
「…!?」

私はフードを取る。
するとキルアの目が見開かれた。

『私の…一応保護者の人からフード被ってるように言われてて…でもやっぱり変だよね、ずっと被ってるっていうのも』

まったくあの人は何を思って私にそう言ったのか。正直フード被ると視界は悪いし音も幾らか遮るし、良いことがない。

『あの人には悪いけど……取っちゃおうかな』
「…ダメだ」
『……え?』

キルアの言葉に目を見開く。まさか否定されるとは…。しかもそれなりに強く言われた。…好きなキャラだからちょっと傷つく。

「!っあ、いや!…ほら!顔見えねー方が色々便利だろ!」

焦っているキルア。大袈裟にジェスチャーまでしている。
…傷ついたの顔に出てたのかな…。それはそれで気を使わせてしまったみたいで気持ちが沈んだ。

…ただ、言っていることは確かに…。表情が見えないのは利点だ。

『うん。分かったキルアが言うなら付けてるよ』

私は再びフードを被り直す。そして、また肉にかぶり付く。

『にしても、美味しい』
「あ、ああ」

微妙な反応。
そっか、キルアは普段もっと良い食事をしてるのか。ゾルディック家だし。……あーでも毒入りか。

チン

『あ、着いた』

コップに入っていた水を飲み口の中を軽くゆすぐ。

「行こうぜ」
『はい』

エレベーターを出るキルアの後を追う。

 

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