愛する世界に変革を
□クラピカ
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クラピカside.
無事、トリックタワーを降り三次試験に合格したと思ったのもつかの間。
次の試験は狩るもの・狩られるもの。
誰が自分を狩る敵なのか。
はたまた誰が自分の狩る獲物なのか。
受験者は皆険悪とした雰囲気で、口を開くものも、ましてや寝ているものなんて居ない。
…ほっとする暇など無かった。
しかし、ターゲットが分かっている分私にはいくらかの余裕が出ていた。
ただ、自分を狙うものが誰なのか分からない以上気を抜けないが…
_ドン 廊下を歩いていると誰かがぶつかってきた。
「っと、すまない」
死角から飛び出して来たことに驚きながらも、受け止める。小柄だ。子供だろうか。子供と言えば三人ほど思い浮かぶが
『…え……クラ、ピカ…』
名前を呼ばれた。それも聞いたことのある声だ。ということはやはり知り合いか。
しかし、目線を下にずらすとそこにいたのは純白。長く艶のある白髪があった。……見覚えはない。
彼女の顔がこちらを向く
「!?…君は」
それ以上の言葉が出なかった。
真っ白い肌に赤くふっくらとした唇。筋の通った鼻に少し垂れ下がった目尻…それから"紅い"瞳…
その瞳は不安げに今にも涙が溢れそうに揺れている。
__緋色が重なった。
『………クラピカ…?』
「っ!す、すまない!」
はっとして気づく。いつのまにか彼女を抱き締めていた。
急いで離れ、改めて彼女を見る。
抱き締めた衝撃で溢れたのか頬には涙が伝っていた。しかし本人は気付いているのかいないのか、特に気にしてないようだ。
頬を伝った涙の後が光で反射して…儚く、それでいて綺麗だと思った。
ふと視線を下にずらすと、灰色の大きめなパーカーにジーンズ…その服装には見覚えがあった。
まさか
「……シーナ、なのか…?」
確かに、彼女なら私が顔を知らないのにも納得出来る。なぜなら、彼女はずっとフードで顔を隠していたのだから。
『は、はい…うん、シーナ…です』
やはり、シーナだった。
シーナは目を泳がせ、どこか落ち着かない様子。…何時もの彼女と違う。こんな彼女はここに来て初めてだ。
そっと彼女の目端を指で拭う。シーナは私の指で光るものを見て驚いていた。どうやら気づいていなかったらしい。
「…シーナ、何かあったのか?」
『あ………え、と』
その言葉に明らかに動揺するシーナ。…何かあったのは明白。よくよく考えてみれば、人があまり居ない場所で死角から飛び出して来たのは可笑しい。
その時シーナの肩がビクリと跳ねる。そしてゆっくりと後ろを振り返っていた。シーナは一点を見ている。
「………誰だ?」
微かだが奥に気配を感じる。…少し殺気の混じった視線を向けられているのが分かった。
…そこにいる誰かがシーナを泣かせるような真似を…?
『…クラピカ、とりあえず移動しよう』
「あ!あぁ」
っ何を考えているんだ私は!
浮かんだ感情を一蹴するように彼女の腕を掴んで歩き出した。