愛する世界に変革を
□なんてこった
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バック一つ分の荷物をまとめた私はサトツさんに見送られ、ここを去る。
そして人気の無い公園のベンチに座る。やることは一つ。レオリオへの電話だ。
携帯を取り出しさっそく電話番号を打ち込む。
…………一応電話帳に登録していいよね?これは決して下心ではないし、うん、また何かあったら連絡とれた方がいいもんね、うん。
というわけで電話帳にも"レオリオ"と登録する。
『………うふふ…』
思わず気持ち悪い笑みが出た。まぁ良いだろう周りに人も居ないし。
因みに、これで電話帳には二人目だ。一つ目はネテロさん(ハンター教会)。二つ目はレオリオ。
……………なんだか友達居ない人みたいじゃないか…まぁ居ないけどさ。
…_……
プルルル、と無機質な電子音がする。そして2、3コール後に繋がった。
〈もしもし…?〉
『おはようございますレオリオ。シーナです』
〈な!?っシーナか!?おま、怪我はもう大丈夫…なわけねぇよな!どうだ?調子は!ちゃんと生きてるよなぁ!!〉
『う、うん!生きてるよ、』
音が割れる程の大声に思わず耳がキーンって鳴った。流石レオリオ。
〈そうか!!よかったぜ…!…お前が倒れた時はどうなるかと…〉
そうだ。私は倒れるだけ倒れて意識飛ばして……たくさん面倒をかけてしまった。
『ごめんなさい…その、ありがとうございます』
〈!…ほんと、まったくだ。…危うくオレの心臓が止まるかとおもったんだからな…〉
声から、どれだけレオリオが私を心配してくれたのかが伺える。胸のうちに黒い罪悪感が渦巻いた。
〈…ま、でも…本当に元気そうでよかったぜ〉
レオリオはほっと息をつく。…本当に申し訳無い。罪悪感で一杯になる。
〈…シーナはこれからどうするんだ?〉
『そうですね、特には決めてないかな』
〈ま、それもそーだよな!まずは怪我治さねーと!〉
『うん。あ、となると予定は大人しく寝ることかな』
あんな大怪我が四日で治る筈はない。レオリオが念の存在を知るまでは怪我してる体で貫こう。…嘘をつくことになるが仕方ない。
〈オレたちは今、キルア連れ戻しにククルーマウンテンって所にいて、そこにある"試しの門"ってやつを開けるために修行してんだ〉
『オレたちってことはゴンとクラピカも一緒なんだね』
〈ああ…本当は今すぐにでも見舞いに行きたいんだが、なんとか1ヶ月でその門を開けられるようにならなきゃならなくてよ…〉
『…ありがとうレオリオ。私にはその気持ちだけで十分だよ。門、開けるのがんばって』
〈…ああ!すまねえ。キルア連れ戻したらすぐに皆で見舞いに行くからよ!〉
…もう…もう大丈夫だよレオリオ。それ以上温かい言葉をかけられたら私が溶けてしまう。
レオリオの言葉にさっきから私の顔は緩みっぱなしだ。
『うん。でも流石にその頃には私も動けるようになってるだろうから、どこか外で会おう』
〈治ってるだろう…ってお前、あの傷が1ヶ月で治るわけねーだろ!?〉
『っあはは!いい驚きっぷりだよレオリオ。残念ながら昔から回復力には自信があるんだ』
〈自信があるったって…!〉
『それプラス、なんてったってハンター教会が運営する医療機関に居るから、余計に早く治るよ』
若干無理矢理感があるが仕方ない。
なぜなら、キルアを奪還後に彼らと会うならこの"治ってる怪我"の理由がつかない。
まだ治ってないフリ…という手もあるが出来ればやりたくない。
というのも、医学の心得があるレオリオに怪我のフリは通じないし、嘘はクラピカにバレるし、ゴンは勘がいいだろうから下手な芝居は通用しない。キルアも同様。つまり、フリでは意味がないということ。
なら、予めフラグを立てた方が良い。
〈まぁ、早く良くなるならそれに越したことは無いけどよ。…無理して治ったフリとかすんなよ!オレらには通用しねーからな!〉
『もちろんですよ』
少しだけドキッとした。
〈…ゴンやクラピカもお前と話したいだろうが今二人は修行中でな。終わったらお前が目覚めたことと、元気そうだってことは伝えておくぜ〉
『…ありがとう』
〈いいってことよ!…そもそもオレは隣だったってのにシーナが動いたのも分かんなかったからよ…〉
少しだけ自嘲するような口調でレオリオは言う。そこには悔しさも含まれていた。
〈…さて!オレもそろそろ修行再会するわ!ほんと、何度も言うようだが元気そうで良かったぜ。これが終わったらこっちから連絡する!〉
『!はい。では、また』
〈おう!〉
…_…_……
ぶち、と通話が途切れる。そしてパタンと携帯を閉じた。
………。
レオリオの賑やかさが無くなったらか周りが異様に静かに感じられた。
ここ数十日は彼らと過ごしていたんだ。…少しだけもの寂しく感じてしまうのも無理ないか。
そして、心が落ち着きを取り戻したが為に、私は"それ"に気づいた。
_ヒュン
スレスレを何かが通る感覚。もう三度目なので流石に解る。
『……あの、いい加減いきなり針投げるの止めてくれませんか?』
やはりそこにはイルミさんが居た。