アメジスト
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点々とした明かりが暗闇の中で浮かんでいた。ここヨークシンで明かりが絶えることはない。眠らない街…。地上が明るいせいで、空は真っ暗だった。…故郷ではあんなに星が見えるのに、同じ空とは思えない。
「ルノ」
『クラピカ』
「交代の時間だ」
『…あ、もうそんな時間か』
何事もないのが一番だが、何事もないとどうにも時間の感覚が狂いそうになる。
「ルノ…」
『うん?』
「少し、疲れてないか…?」
『そう見える?』
「ああ」
クラピカは私の隣に並び、私と同じくきらびやかな街を見下ろす。私と同い年の筈なのに、随分と大人びて見えた。
疲れてる…そう見えるのなら、そうなのかもしれない。
『そうだね……やっぱりこの街の何処かに居るのかと思うと気が入っちゃうのかもしれない』
「……ルノ」
呼ばれて振り替えると暖かいものに包まれた。それから懐かしい匂い。クラピカの匂いだ。
「やつらは…こちらから手を出さない限り我々に何かしてくることはまずない。だから…その時の為に今は体を休めるべきだ」
『…うん』
「それに…私はルノを必ず守る」
『私もだよ。クラピカ』
「ああ…」
クラピカの背中に手を回す。
「…蜘蛛は必ず捕らえる。そして同胞の目を取り戻す」
『………うん』
クラピカの腕に力がこもった。私も腕に力を込める。今離れたら、私のこの顔を見られてしまうから。
_蜘蛛の頭は、君が捜してるクロロだよ。
『………』
ハンター試験が終わった後、奇術師に言われた言葉が甦る。嘘つきな彼のことだ。その言葉が真実である保証はない。でも、クロロさんを知っていなければ発言できない言葉だった。なら必然的に信憑性は増す。……どちらにせよ、この目で確かめるまでは嘘とも本当とも言えない。
『じゃあ、クラピカの言う通り少し寝てくる』
「ああ、無理はするな」
『クラピカも』
クラピカから離れ、手を振り別れる。
オークションは明日の夜から。
『………』
…もし、ヒソカの言っていたことが本当で…クロロさんが蜘蛛の頭…私たちの同胞を殺した主犯だったなら…。
私は彼を殺せるだろうか。それとも。
触れた指輪は冷たかった。