アメジスト

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9月1日。毎年この時期にヨークシンシティで開かれる世界最大規模のオークション。

世界最大と言うだけあって、オークションには様々なものが出品される。宝石から骨董品、書物、それから生物…。私の所属するマフィア、ノストラードファミリーのボス、ネオン=ノストラードは人体収集家だ。

人体収集家ならば"緋の眼"も欲しいに違いない。案の定、今回の競売で緋の眼を落札するように言われている。

そして、オークション…すなわち数々のお宝が集まるのだから、幻影旅団が来る可能性は十分ある。

実際、クラピカはヒソカから今回のオークションに幻影旅団が絡むことを言われたらしい。…頭がクロロさんであることは知らないみたいだけど。

だから私たちの目標は、緋の眼の確保、それから幻影旅団への復讐。

「ルノ何かあったら…」
『分かってる。それはクラピカもだよ』
「ああ…」

頷く割には府に落ちていなさそうな顔だった。クラピカは少々私に対して過保護なところがある気がする。その理由は十分解るが、そういうクラピカの方が私は心配だ。

「ほら、いつまでやってんだ。お前ら担当違うだろ」

バショウが後ろから声をかけてきた。その隣にはリンセンもいる。二人とも同じノストラードファミリーに護衛として雇われている仲間。そして今回の競売で私と同じ裏口側担当を任された人たち。

『…大丈夫だよクラピカ。一人じゃないから』
「……ああ、分かってる」

クラピカの態度に苦笑いしながら私はバショウの元へと駆ける。

『すみません』
「いや……つーか、お前とクラピカの関係って何なんだ?随分親しいみてーだが…」
『ハンター試験のよしみです』
「ああ、なるほどな」

間違ってもクルタ族の同胞とは言えない。彼らは仲間とは言っても他人だ。私の本当に信頼できる人はクラピカだけなのだから。

裏口側担当と言っても張り付く訳ではない。少し離れた場所から裏口を監視する。

「ま、今のところ怪しいやつはいないな」

会場への入場が始まった。裏口は会場を運営する職員やお偉いさんの入場口であり、その一人一人を監視する。が、確かに怪しい人は居ない。

リーダー…ダルツォルネは今回の地下競売に何者かが襲うという情報があったと言っていた。そんな情報、嘘でも真実でも毎年流れていそうだが…これがヒソカがクラピカに言っていたことだとするなら別だ。何者…が幻影旅団だとするなら。


『………中の三人大丈夫ですかね』
「あいつらも念能力者だ。それもそこら辺の奴等よりかは上のな。よっぽどじゃない限りは信じた方がいいだろう」
『………よっぽど』

幻影旅団だったならよっぽどだろうな。

競売の始まる時間。クラピカたち正面口側担当から連絡がないということは、あちらも怪しい人物は居なかったんだろう。そして、私たちの方にも居なかった。

「…なんだ、なにかあんのか?」

私の様子を見かねてだろう。少しだけ真剣な顔で尋ねられた。

『いえ……ただ、リーダーが地下競売を何者かが襲う情報があった、と言っていたのが気がかりで』
「まぁ、そりゃあそうだけどよ。オレたちがやるべきことは監視だ。監視して怪しい奴が居なかったんだ。それ以上悩んでも仕方ねぇだろ」
『…………』

彼の言うことはごもっともだ。監視して、居ないのだから私が気にすることではない。そもそも情報の真偽もわからない。与えられた任務だけ遂行すればいい。………私には向いてないのかもしれないな。

どうしても思ってしまう。監視して居なかったということは、監視の目を潜り抜けて既に中に居るんじゃないか、と。……幻影旅団が来ていると思ってしまっているからかもしれない。彼らなら気づかれずに中に入ることなど簡単だろう。

競売が始まってまだ30分も経っていない。リンセンの携帯に着信が入った。
私はそれを一度見てから裏口に目を戻す。

『…………?』

一瞬裏口から出てきた男がこちらを見た気がした。とても大柄な男。けれど何事もなかったように反らされた。…ただ、こちらを見ていただけか。気づかれた訳ではない。

「…大変なことになった」

通話が終わったのか戻ってきたリンセンは口一番にそう言った。


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