アメジスト

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オークション会場内の人が全員姿を消した。それも、彼らが座っていた椅子ごとごっそり。

それから、競売に出される予定だった品が金庫から無くなっていたらしい。

嫌な予感は良く当たる。

会場内には相当な人数居た筈だ。それも、競売担当だったノストラードファミリーの三人の仲間含め、念能力者もそれなりに居ただろう。それなのに、全員を恐らく殺し、そして競売品を盗んだ。…そんなことが出来るのは奴等しかいない。

盗んだ奴等は気球に乗って逃亡しているらしい。私たちも至急追いかけることになった。…同じ方向に向かう車が多い。なんでも、この一連の首謀者を捕まえた組織にはコミュニティー…マフィアの大本…から莫大な褒美を貰えるらしい。…私から見れば死にに行くようなものだと思ってしまう。全員が全員、念能力者ではないだろう。

「…お前の言った通りだったな」
『…たまたまです。確かに嫌な予感はしてましたけど、だからって出来ることはない』

競売担当だった三人は死んだ。ならあそこで私が無理矢理にでも中に入れば助かったのか。否、会場にいた全員を消す能力…私が行ったところで結果は変わらなかった。

「着いたぞ」

車から降りると高い崖に囲まれた荒野のような場所だった。リンセンの後に続くと見慣れた顔ぶれが見えてくる。その中にクラピカを見つけお互い目を合わせた。

「爆発!?」

その音の方向を見ると遠くで煙が立ち上っていた。既に先に着いた別のマフィアが戦闘しているらしい。…ごくり、と唾を飲む。果たして彼らが戦っている奴らは幻影旅団なのか…。そして……居るんだろうか。

「………。敵も…念の使い手だ。しかもケタはずれに強い…!!」

クラピカが双眼鏡で煙が立ち上った方を見ていた。

「先に着いた連中は…全滅だな」
「な…」
「銃器では歯が立たないらしい」

…やはり殆どの奴らは念が使えないマフィアだったのか。念能力者にただの銃など意味がない。

「見た方が早い。奴のオーラのすさまじさがわかる。転がってる死体の数もな」

クラピカがリーダーに双眼鏡を渡し、覗いたリーダーは汗を吹き出していた。それから近くの人の手に渡り、私に渡された。

双眼鏡を覗く。

上半身裸の野生感溢れる男が一方的にマフィア連中を殺していた。戦闘、ではない。虐殺だ。それも、男が掴んだマフィアの腕や足は千切れ、頭も飛んでいた。粉々、だった。

「あいつ素手でヒトを紙屑みてーにちぎってやがるぞ!!あれを捕まえる!?オレは絶対にゴメンだぜ」
「オレもだな。到底勝てる気がしねえ」

スクワラの言葉にバショウが同意する。私も、正直あの並外れた筋力に勝てる気がしない。殺すにしても、あれじゃあ急所に届くまでに筋肉で止められてしまいそうだ。捕らえる、なら尚更難しい。

………一応、方法が無いわけではないが、今戦っている男の背後の崖の上に仲間らしき奴等が数人居る。例え男を捕らえられてもその仲間にやられるのが落ち。私には遠距離での攻撃で有力なものがない。

「どうした?」

クラピカがセンリツに尋ねる。センリツは眉を下げ、疑問の表情をしていた。

「心音が…いつの間にか一つ増えてるわ」
「な…」
「!!」

瞬間。気配を感じ距離を取る。周囲の皆も距離を取り、警戒体制に入っていた。

もこ、と地面が競り上がっていた。それはもぐらのようにこちらによってきて止まる。そして、大きく膨らんだと思ったら何かが出てきた。

ず、にゅる、と出てきたその異形な姿に目を見開く。…人…?人とは到底思えないような姿。けれど穴から出てくると二本足で立っていた。

「オレは陰獣の蚯蚓。お前らどこの組のモンだ?」
「リッツファミリーのノストラードさんに雇われてるボディーガードだ」
「………なるほど。少しは念が使えるようだがやめときな…」

陰獣……?聞いたことがないが、彼…?…は念を使えるようだ。それに、リーダーに対する口調からして、上の人間。

「あいつらただのコソ泥じゃない」
「!!?」
「殺しが生活の一部になってるな。いわば殺しのプロだなうんうん」
「餅屋は餅屋」

いつの間に居たのか新たに三人の男…?が現れる。彼らも陰獣…か。

「陰獣に任せときな」

そう言い彼らは奴等へ向かっていった。

『…クラピカ』
「……どうした」
『陰獣って』
「ああ…。今回の地下競売の元締め、マフィアンコミュニティーでも高い地位につく十老頭お抱えの実行部隊…それが陰獣」

それならばそれなりに強いのだろう。

……けれど、どうにも彼らが勝てるとは思えなかった。


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