碧に染まって

□これは夢
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暫くして誰かが教会に入ってくる気配を感じ顔をあげる。

「ノア」

クロロ少年だった。
そして少年の手には紙とペンが。

『おー、持ってきてくれたのか』

私は本をパタンと閉じ先程の椅子の場所まで移動する。

そして紙とペンを受けとる。そこで異様なペンの重さに気づく。

『!これ万年筆だ。こんないいの持ってこなくても良かったのに』

もっとこうボールペンとか、鉛筆とかでも全然いいのに。

「?これしかなかった」
『そうなの。まぁ、それなら仕方ない』

さも不思議そうに言うクロロ少年はもしかしたらセレブなのかもしれない。

『えーと、これが"あ"で…これが"い"』

早速ハンター語なるもので"あいうえお"と縦に書き"かきくけこ"と続けていく。
といっても、私もハンター語が読めるだけでスラスラと書ける訳じゃないので本を見ながら書いていく。

『…よし、出来た。この表さえ覚えれば本は全部読めるよ、多分』

クロロ少年はぱあっと顔を輝かせる。うわ、可愛い。とてつもなく可愛い。

そして、"あ"…"い"、という風にさっき私が教えたことを反復して呟く。うん、可愛い。やっぱり子供はこうでなくっちゃ。

集中しているクロロ少年を邪魔する訳にもいかないので、私は祭壇の前に戻る。

そして先程のつまらない本にまた目を通す。

………

……

……

「ノア」

暫くして、名前を呼ばれたので顔をあげると目の前にクロロ少年が居た。

『ん?何?』
「ノアってここの人なの?」
『ここ?』
「うん」

なんと答えるべきだろう。

「ノア、おれが本よんでたらいきなり現れたから」
『そうなの?』

頷くクロロ少年。
なんと、それは驚きだ。そりゃ柱に隠れたりもするわけだ。

『さぁ、私にも分からないかな。気づいたらここにいただけだから』
「そっか…」
『クロロ少年はここにずっと居るの?』
「ううん。この教会にはたまたま寄っただけ」
『へぇ』

つまり、初めて来たわけではないが毎日来てるほどでは無いらしい。

『クロロ少年はここの外を知ってるの?』
「外?ノアは外を知らないの?」
『うん。どうやらこの教会からは出られないみたいなんだ』
「出られないの?」
『そう。ただ…まぁ…出られないというよりかは出たくない、かな』

クロロ少年は首を傾げてしまう。こればっかりは私にしか分からない感覚なので言いようがない。

『ふぁ……』

なんだか眠くなってきた。夢入りしてから時間は経ってるし、もしかしたら目覚める前兆なのかもしれない。

『眠くなってきたから寝るね』
「うん。お休みノア」

柔らかいクロロ少年の声が更に私を眠りへと導く。そして私は眠りについた。

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