碧に染まって

□求める
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「おはよう、ノア」

『…………少年?』

目を開くとそこには少年がいた。
紛れもない、真っ黒の髪に大きな瞳の彼が居た。

はっとして周りを見渡す。教会だった。

「どうかしたの?…また、嫌な夢でもみた?」
『ううん。なんだかこうやって目を開けたら少年が居るのが久しぶりに感じて』
「…変なノア。オレは毎日来てるだろ」
『ふふ、そうだね』

少し不機嫌になった少年の腕を掴み引っ張る。

ぽふ、と私の胸に倒れる少年を優しくぎゅっと抱き締める。

温かい…あったかい。

「……ノア?」
『少年、クロロ少年』
「……なに?ノア」
『ずっとこのままならいいのにね』
「……ずっとこのままだよ。オレはノアを離したりしない」






___________






『………』

目を覚ますと見覚えのない天井だった。暖かな光はない。

その温度をもう一度感じようと隣を見る。けれど、そこに形は無かった。

輪郭をなぞるように手を伸ばす。けれど、思った感触を感じることは出来なかった。

『………そっか』

ヒソカ。居ないんだった。


身体を起こす。
それから昨日の事を思い出す。

ああ、そうだ。イルミにこの部屋に連れて来られたんだ。

周りを見渡す。私の寝ているベッドと、小さな机と椅子。ドアは2つ。片方が出入り口で、もうひとつはシャワー室。それから後ろに格子のついた小さな窓。きらびやかな光はなかった。

昨日は…取り敢えずお風呂に入って寝たんだ。色々頭も整理したかったから。整理してる間に寝てしまった様だけど。

『……静かだな』

おはよう、という声は聞こえない。

_コンコンコン

ノック音。

「入っても宜しいですか」
『…どうぞ』

聞こえた声は女性のものだった。

「着替えをお持ちしました。朝食の準備が出来ておりますので着替えたら出てきてください」

スーツに身を包んでいる女性は小さな机の上に恐らく着替えであろう服を置いた。

「では」
『あの』
「はい、なにか?」
『食事って…私の分もあるんですか』
「作用でございます」

だとしたら申し訳ない。

『すみません。私お腹が減らない体質で、食事は大丈夫です』
「…そう、ですか。分かりました。取り敢えず、着替えましたらお知らせ下さい」
『はい』

女性は綺麗な動作で部屋の扉を閉めた。


ベッドから降り、地に足をつける。…冷たい。近くにルームシューズがあったので履かせてもらう。

机の上の着替えを手に取る。なんだか見覚えがあった。

…これは、着物?

青と緑のグラデーションの着物がそこにはあった。
驚く。着物は日本の民族衣装のようなものだ。ということは、やはりここにも日本はあるのか。もしくは、日本に似た場所が。…いや、たまたま似ていただけかもしれないけれど。

『…………ほ、本格的だ』

私が着たことがあるのは精々浴衣止まりである。それでも一応何となくは分かるので身に付けてみる。

両腕を袖に通し、襟先を持って足元の裾が引き摺らないようにきものを上げる。それから左側を上にして重ねる。腰辺りの余分な布を折って、紐で巻く。両脇の穴から手を入れ膨らみを持たせて整える。後は帯を巻くだけ……。帯ってどうやって巻くんだろう。

着替え終わったら知らせてくれ、と言っていた。扉の前で待っているかもしれない。

私はゆっくり扉を開き顔だけ出す。

予想通り先程の女性がこちらをみていた。

「どうかされましたか」
『あの、帯の巻き方がわからなくて』

私が言うと女性は了承し部屋に入ってくる。それから無駄な動きはせず、机にあった帯を取るとささっと巻き付ける。て、手慣れている。

「出来ましたよ」
『ありがとうございます。凄いですね』

あの手際の良さは流石はプロ。感心した。

「……」
『あの?』
「い、いえ。また、何かありましたら遠慮なくお申し付け下さい」

少し動揺したように目を反らした女性。けれど直ぐに業務的な顔に戻っていた。

ルームシューズを脱ぎ、置いてあった足袋を履いてから下駄に指を通す。…うん、歩きづらい。

『それで、一応着替え終わりましたけど』
「では、着いてきて下さい」

言われるがままに私は女性についていった。

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