碧に染まって

□小鳥
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見上げていると肩に鳥が止まった。

触れようとすると勢いよく飛び立つ。驚かせてしまったんだろう。

その小さな鳥は見上げていた場所に腰を下ろす。そこがお気に入りのようだった。

思い描いていたよりもそれは簡単だった。単純なこと。見つからなければいい。けれど昔はそれが出来なかったんだから、少しの達成感。でもまだ完全に感じてはいけない。そのためのピースをボクは埋めに来たんだから。

小鳥を掴む。

温かい。手のひらに振動が伝わってくる。小動物はいい。彼らはその小さな体を限界まで活用して必死に生きている。弱くも、そこには力強さがあった。

……おっといけない。

手を開くと勢いよく鳥は飛んでいく。蛇行してそれから木々へと埋もれていった。

感動の再会に部外者はいらない。

取り出したカードはハートだった。高ぶっているのかもしれない。無理もない。

檻に切り込みを入れる。…崩れた音は大きい。聞こえてしまったかな。

それでも歩幅を変えることなく、焦ることなく一歩、一歩。

『…………』
「…………」

彼女は静かに眠っていた。

その頬に触れようとして留める。堪能するのはあとにしよう。

全く乱れていない布団を捲り、彼女の全体が空気と光に晒される。ネグリジェを纏った彼女は姫さながら。
その姫の細い足の膝下に右腕を通す。左腕は肩下に。そして引き寄せる。

相変わらず軽い。そして全く起きない。身動ぎさえしない。それも相変わらずだった。寝ている彼女は自らしか起きない。それが分かっていたからこそ寝ている間に奪いにきたんだけど。

「………」

彼女の匂い。堪能するのは後だと分かっていても引き寄せて確かめてしまう。…ああ、彼女だった。

早く目を開かないか。そう急ぐ思いを押し戻し崩れた入り口へと向かう。

瞬間、殺気。

「………来ると思っていたよ」
「……ヒソカ」
「やぁ、イルミ。久しぶり」

笑いかけてみたら彼の殺気が一層強くなった。安定して彼女の毒には侵されているらしい。ボクが彼女を抱いているのを見て明らかな嫌悪を映していた。それは無表情な彼とは思えない。

「キミとの再会も嬉しいけど今は暇がないんだ」
「どうでもいい。ノアを離せ」
「ひどいなぁ。本当にキミとまた会えて嬉しいんだけど」

言いながら唇を舐める。…格段に強くなっている。それを感じでゾクリとした。やはり彼は良い…。今すぐにでもやりあいたい。でも、今日の目的はそれじゃない。

「今日はノアを返してもらいに来たんだ」
「………」
「今日のために色んなことをしてきた……と昔話をしている時間はないか」

イルミ以外の気配がある。流石に異変に気づかれたらしい。これ以上留まるのは良くない。

「じゃあまたね、イルミ」

言って飛び降りる。直ぐに殺気が襲ってきたのでそれも避ける。彼女を抱える腕に力を込める。木々をぬい、時々追っ手を沈める。

そんななかでもやはり彼女に起きる気配はない。けれど、

『……………、……』

太陽の光があたって少しノアが身動ぐ。…目が覚めてきたのか。

さっさと二人だけの空間に戻ろう。
目を開けて、ボクを見た彼女は一体どんな顔をみせてくれるのか。
その瞬間のために、ボクはここまでやってきたんだから。

興奮とはまた違う、期待と羨望に包まれてボクは山を後にした。

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