碧に染まって
□宝石のような人
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朝。
起きて、呆然としそうな頭を回し、とりあえずベッドから降りることにする。次にルームシューズを履きお風呂場へと向かい、洗面台で顔を洗う。タオルで顔を拭く。顔をあげると何とも言えない顔の私が映っていた。
それから寝室に戻って着替える。着替えてからリビングに行き、なんとなく椅子に座る。
シルバさんに話した結果、問題なく了承を得られた。ただ、家はパドキア共和国内で、一週間に一度はゾルディックに行くという条件付きだが。
シルバさんは執事たちの練習相手をしてほしいからだ、と言っていたが、実際は私をゾルディックに繋いでおく為だろう。まぁ、私としても一週間に一度はイルミやミルキに会えるのだから全然悪くない。
『………………』
うん、どうしよう。何しよう。いや、やることは沢山あるのだ。ただ、今は朝。こんな朝早くから街に行っても誰も居ないし店もやっていない。なら、必然的に家で過ごすのがベストだろう。
ただ、私には食事が必要ない。ということは朝食を用意する必要がない。あ、なら冷蔵庫は切っておこう。冷蔵庫のコンセントを抜いた。で……うん。何をしよう。
ゾルディックに居た頃なら起きたら執事さんが入ってくるし、ヒソカと居た頃なら彼の朝食の準備をした。少年と居た頃は、遊んだり…本読んだり…。
…………そうだよ。私は一人になったことがない。必ず半径5m以内には誰かが居た。…自分から考え、最善だと思った行動だったがよくよく考えれば失敗だったかもしれない。…私は私のために動く事が苦手だ。
『………ペットでも飼おうかな…』
まだこの家に来て初めての朝だと言うのに、そんなことを思ってしまった。
『……いや、飼ったところでどうにもならないか』
私は靴を履き、玄関の扉を開ける。…風がふわりと吹いてきた。日の温かさに目を細める。
私のために動けないなら、目的にすがるしかない。その矛盾に気づいていても、そういう建前がないと私は生きていけない。
『……ネットカフェくらいならやってるかな…』
私は静かな街に身を投じた。