碧に染まって
□サプライズ
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外は晴れ晴れとしていた。最近は快晴続きでなんとも気持ちが良い。
夜の散歩も良いが、日の元を歩くのも勿論良い。
日光、というのは人工の明かりと違って照らすだけではない。そこには様々なものがつまっている。中でも特に熱。私にとって熱ほど重要なものはない。
何個か感覚が閉ざされているからか、以前より熱を敏感に感じるようになっていた。だから太陽の熱がいかに特別であるか、解る。
そんな熱から離れ、更に明かりも薄らいでいく。
『…………ここかい?』
「ああ」
着いたのは太陽があまり効果を発揮していない場所だった。辺りにはどれもよく似た建築物が建ち並び、漂う空気は埃っぽい。
見上げれば案の定太陽は建築物に阻まれていた。
クロロ少年はその建築物の間を歩いていって、その一つの入り口の前で足を止める。
お世辞にも"綺麗な"や"新しい"とは言えない様な建物。コンクリートがむき出しで、冷たい感じだ。
少年が中へ入って行った後を追う。やはり入った途端、全身を冷涼な空気が包んだ。……それは心地が良い。
私の性格上、こういった場所は好きだ。
『……』
「緊張してるのか」
『そう、だね』
この先に彼らがいるのは間違いない。わかりづらいが確かに人の気配がある。
クロロ少年曰く、私のことはみんなには言ってないらしい。サプライズ、のつもりなんだろう。私としても彼らの驚く顔には興味がある。多少の悪戯心も健在だ。……だが、年数が年数だからな。
みんながみんな、クロロ少年の様にいくとは限らないだろう。……は、誰こいつ?といった目で見られる可能性も十分にあり得る。
……先ず大切なのは第一声だ。
無難にいくか、ユーモアか…いや私にこの状況でユーモアなんて可能性なのか。
悩んでいればクロロ少年が歩みを止めたので私も止まる。それから少年を見上げる。……本当、私よりも大きくなってしまったな。
『………?』
どことなく浸っていると少年が私の頬に両手を添えてくる。
「大丈夫。ノアはいつも通りでいい」
『………』
そう言われても……というのが正直な感想。どうやってもこの何とも言えない緊張感が抜ける気がしない。
その感情が顔に出てしまったのか、クロロ少年は笑う。
『……少年』
「ごめん。でも、あまりにノアが………可愛い顔をするから」
『……え?』
その返答には目も丸くなる。……何をどう見たら可愛いなんて感想が出てくるのか。
静かに少年の手が離れていく。
「なら、こういうのはどうかな」
『こういうの、とは』
目は丸くしたまま聞き返す。
……クロロ少年は口角を上げる。それは悪巧みをするような、子供の表情だった。
「みんなを徹底的に驚かせる」
そう言った少年に私の目は更に丸くなった。