放浪者
□姉様
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「やよい殿」
「はい、何にござりましょう?」
「食事に湯浴みに生活の場の提供という厚遇…お気遣い痛み入ります」
風呂上りにいきなり呼ぶから何かと思えば…。
まだ言うか、その堅苦しい礼。
いや、気持ちはわからなくもないのだけれど。
あんまり言われても、こっちの方がなんだか申し訳なくなるし…。
「厚遇ですか?元の暮らしよりずっと質素になると思いますが」
「そんなことはありませぬし、何よりやよい殿のそのお心がありがたいのです」
いや、絶対質素だぞ。
小国と言えど、次男と言えど、彼は城主の息子だったのだから。
虎之助だって子飼いで城主だし、梵天も伊達家の坊ちゃんだ。
佐吉も城は質素だったと言うけれど、城主様だったわけですしおすし。
まあ、若返ってるから子飼いと弁丸はたぶん大阪城にいるんだろうけど。
「私は何も…弁丸様方が好機を掴んだのです」
「なんと深きお心……実に何と御礼を申し上げてよいのやら…」
「いえ、弁丸様は私を過大評価なさっています」
「いえ、やよい殿が御自身を過小評価なさっているのです」
…え、何この埒があかないカンジ。
日本人だと多いよね、この《いやいや合戦》。
いや、そんなことないです。いやいや、ご謙遜を。いやいやいや…ってやつ。
やば、ゲシュタルト崩壊してきた。
「あーはいはいソウデスネー」
「やよい殿、真面目に聞いておられますか?」
「あ、弁丸様ちゃんと髪を拭いてくださいませ、風邪をひいてしまいます」
「あっ、忝い………って話逸らしましたね?」
やばい俺今、日の本一の兵にツッコミいられてる!やったね!!
面倒なことは流すに越したことはない。
………それよりも、だ。