短編集

□まるで私が
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縁側にちかげさんが座っていた
空をながめ
薄着で
髪を濡らし

「ちかげさん…?」

『…声、不破くんかな』
残念、三郎でした
でも雷蔵の変装をして、声も真似てるからわからなくて当然だろう


『…当たってる?』
こちらを向きもせず上を向いていた

「…違ってますよ、三郎です」

『ははっ、ごめんなさい』
別にばらさなくたってよかったのに
私は、なにをしているのだか
謝ることなんて何も無いのに

「何してんすか、風邪ひいてるんでしょ
悪化しますよ」

『…悪化させようとおもってね』

「?」

『殺してくれないのなら、自分で死ねないのなら、この風邪を悪化させて死ぬのもいいのかと


なーんちゃって』
鉢屋くんひどい顔してるよ
なんて
ひどいに決まってるじゃないですか
というか、なんでわかったんすか

「顔見ていないくせに」

『そうだね、なんとなく、言っただけ』

「…死にたいんすか」

『いいや、まだ生きていたいさ
ただ、星が綺麗だな…っておもってね』
何が本当の事で
何が嘘の事か
やっぱり謎な人だ
でも、その星が綺麗ということは前から言っていた
そんなもの、なのだろうか

「ちかげさんの時代では山の方まで行かないと綺麗に見えないんすよね」

『?…あぁ、そういえば前に言ったね
そう、だね
だとしても私は初めてみるんだ
こんな綺麗な星空』

「私からしたら、普通なんですけどね」

『いいね、私もこの時代に生まれてきたかったよ』
未だにちかげさんの顔が見えないから何を考えてるかわからなかった
でも、
ちかげさんが私たちと同じ時代にいて
同じ時間を過ごしていたら
私たちはどうしていたんだろう
というより、出会っているのだろうか
だったら私はー…

「いいことなんて、そんなないですよきっと
ちかげさんの時代では内戦なんて起きてないし、でんきというものがあって便利なんでしょう?」

『便利すぎちゃって萎えるけどね
こっちで生活している方が生きてる感じがする』

「…そうっすか」
私の心境はさっぱりわからない
私はちかげさんに何を抱いているのか
うれしいのか
かなしいのか

『…寝るか…さすがに冷えてきたね』

「明日倒れてても知りませんからね」

『大丈夫誰も部屋に入れないし出ないから』

「…そーゆうことじゃねーっすよ」
この人は自分を否定しすぎだ
自分の事を見下しすぎだ
それでいて強いから
弱さを見せないから
頼ってほしいのに
頼ってくれないから

そんなこと思ってるなんて
まるで私がこの人の事を

『ふふっ、心配してくれてありがとう』

「…うっせーす」
好きみたいじゃないか


死にたいなんて言わないで
悲しい声で泣かないで
いつでもいつまでも私が
あなたを
ずっと

支えていくから





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