どうにでもなれ

□さん
1ページ/1ページ


なんだか七松先輩に毎日会ってるような気がする今日この頃です。向こうから会いにくるんだよ。なんかもう委員会のお誘いとかじゃなくただからかいに来ているような気がしてならない。正直七松先輩の相手するの体力使うんだよ…。
よし、今日は予定がない休日だし、今日こそは会わないぞ!と、心に決め部屋に閉じこもる。が、ものすっごい暇だった。ああもう、仕方ない。図書室に行って本でも読もう。そうすれば久しぶりの休日も有意義に過ごせるだろう。流石に七松先輩も図書室なら来ないでしょ。本とか読まなさそうだし。

久々に図書室に来たことですこしテンションが上がる。図書室のこの時間がゆっくり流れている様な穏やかな雰囲気を感じて安心。

…そして図書室での本選びから結構経つ。思ったより本の種類が少なくてがっかりだ。立派な棚が並ぶばかりだ。昔はもっと置いてた気がするんだけど…。
よし、これに決めた。休日に図書室に来て資料ではなく小説を選ぶあたりわたしっぽい。とかなんとか自分で思う。この本を借りて部屋で読もう。
えっと、これをどうするんだっけ。全くと言っていい程に本の借り方を忘れていたわたしだった。取りあえず前の机に座って本を読んでいる図書委員らしき六年生に尋ねよう。

「すみません、この本借りたいんですが…」

わたしの声に顔を上げる六年生。顔に傷があった。もそもそと六年生は喋る。図書カードを見せてください。と、ものすごく小さな声で聞こえた。それに釣られてわたしも声が小さくなる。

「え?図書カードですか?も、持ってない人はどうしたらいいですか?」

顔に傷のある六年生はカードと筆を取り出し、わたしに差し出す。これに名前を書けばいいんだ。筆を受け取り名前を書く。顔をあげれ六年生がジ、とわたしを見ていた。え!わたし書くところ間違えたかな?いいや、合ってる。

「あの、わたしの顔に何か付いてます?」

少し首を傾げて問うと六年生はムスとした顔で首を振った。

「シズさん、小平太がよくあなたの話をしている。」
「え、七松先輩がですか」
「笑顔が素敵な人だと」

七松先輩がそんな事言ったの!?え!?想像できない!先ほどより機嫌の悪そうな顔でもそもそと喋る六年生。七松先輩のお友達だったんだ。それでもしかして妬いて…?

「シズ!」

シンとした図書室にバアン!と大きな扉の音が響く。勝手に視界に入ってきたのは案の定七松先輩だった。

「呼んだか?」
「呼んでないです」

と堂々と足音をたてて入ってくる七松先輩。わたしの隣に座った。少し声が煩い。ずっと静かな空間だったからその声がでかく感じる。
図書室にも七松先輩は出現するのか。しまった、完全に不覚だった…。

「長次!私のシズを口説かないでくれ!」
「あのですね、わたしは先輩のものじゃないですから。それに口説かれてませんし」

そう言うとどう受け取ったのか七松先輩に後ろから体重をかけられる。重!!なんなんだよこの人!!うだうだやっているわたしたちに、もそもそと喋りだす長次先輩。

「…図書室では静かに」
「そうですよ、七松先輩静かにしてください」

図書室でもいつもと変わらない音量で話してるもんだから少し煩い。しかもこの先輩いつもわたしの耳元で喋るからうるさいんだよ。後ろの七松を見やる。ベタと背中にくっ付いている。なんでくっ付く必要があるんだ。目が合った七松先輩は立ち上がった。自由人だなこの人。

「わかった。シズ行くぞ!」

と腕を捕まれて無理やり立たされる。え、なんでわたし!?わたしの用事が優先でしょう!本を借りてる途中!全く強引だなもう!

「いけいけどんどーん!」
「ああ先輩!わたし本借りる途中なんですけど!」

というわたしの叫びも暴君には聞こえていませんでした。わたしの図書カードがああ!





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ