いちばん!

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「おばちゃん、B定食二つください」


今日はいつもより少し早い朝食。同室のサエちゃんと自分の定食を頼んだその時、例の声が聞こえた。食堂の入り口に目をやれば、丁度平くんが友達と一緒に入ってきたところだった。…あ、よかった。ちゃんと友達いたんだ!なんて失礼な事を考えながら平くんに挨拶をする。


「おはよう千鶴、今日はいい日になるぞ」
「え?どうしてですか?」
「朝食という貴重な時間に私に会えたからだ!!」

今、近くの席に座っていた忍たま一年生と隣のサエちゃんからうわあ…とマジ引きな悲鳴が聞こえたんですけど、思っていても口にしては駄目よ一年生サエちゃん!わたしだって我慢したんだから!
だがしかし平くんの後ろの友達は呑気に欠伸をしていた。平くんに全く興味がないみたいだ。え、あなた、平くんと友達じゃないの…?無関心が一番傷つくんだよ?

苦笑いしつつおばちゃんから定食を受け取る。


「そんな千鶴には戦輪の指導をしてやろう」
「え」

戦輪なんて見るからに難しそうな武器を扱おうなんて思ったことない。実技の授業でも何度かやったことあるけど始終ヒヤヒヤしっぱなしだった。でもどっちかというと座学より実技の方が得意なわたしがその話に乗らないわけがない!苦手なら克服するまでよ!


「お願いします!」
『 え 』

ノリノリでお願いしたんだけど、近くの席に座っている一年生とサエちゃん、さらに平くんの後ろに立っている友達までもが驚いた顔をしていた。わたし何かおかしなこと言っちゃった?




「千鶴、後悔してない?」
「え?」

いい加減に席について定食に箸をつけていた時、サエちゃんがそんな事を聞いてきたのだ。
後悔…?わたしの好物のたくあんが付いているA定食にしなかったからだろうか。今日の気分は梅干だったんだから後悔はしていない。むしろ無駄に清清しい気分だ。


「ちっがう!あんたの好みなんてどうでもいい!」
「心の語りを勝手に聞いた上にわたしの好みはどうでもいいなんて!…そこまで言わなくても」

いつものサエちゃんだから特に気にせず魚をつつく。まあ、同室の友達は気の強い美人というあるあるな設定ですよ。


「あるあるとか言うな」
「ごめん」
「じゃなくって!もう!話が進まない!」
「…ごめん」

いや、これはわたしは悪くない。サエちゃんがわたしの心の中を読むからこうなるんだ!イエーイ!サエちゃん聞こえてるうー?

なんて言ってたらまあ案の定ゲンコツが落ちてきたんですけど…。


「いたい」
「はあ、もういいわ。」
「そう言われるとすごく気になる」
「あんたすごい笑顔だったし聞かなくてもわかる」

聞かなくてもわかるなんて流石読心術を心得てるサエちゃん!冴えてるね!なんて言ってたら、すっごい冷めた目で睨まれて置いていかれた。ほんとうにごめんなさい。
これだから安藤先生を嫌いになれないんだ、わたしは!




 

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