いちばん!

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サエちゃんはなにやら先生の頼まれ事で学園を出ているみたいだった。一人、食堂に向かい、おばちゃんに定食を頼む。お昼時ということで食堂は生徒と先生でいっぱいだった。いつもはサエちゃんと時間をずらして来ていたのでよほど気にはならなかったのだが…。

お盆を受け取ったものの、席が空いていない。いや、空いてるのは空いてるんだけど、話したことのない人と一緒に食べるのはどうだろう…。会話もあまりなく、気楽に食事できる先生達のところは…空いていなかった。時間ずらして来ればよかったかな…。
どうしよう、もしかしたらわたしご飯食べれない…!?と被害妄想に心臓をバクバクさせながら食堂を見渡して席を探す。すると大きな目と目が合った。綾部くんだ。彼は相変わらず無表情で、わたしはびびりながらも会釈をする。綾部くんもこくり、と頭を下げてくれた。
そんな綾部くんに気づいた回りのお友達はみんな一斉にわたしを見てくる。その中に平くんもいたんだけど、知らない人の目に思わず固まるわたし。そ、そんなに見ないでおくれよ…!へ、変な汗かいてきた…。

おろおろと焦っているわたしに、平くんが近づいてくる。な!なにか言われる…!?と身構えていたら、手に持つお盆が軽くなった。というよりお盆を平くんに取られた。え、わたしの定食…!もしかして平くんってくいしんぼう…!?

「こっちだ」

ポカン、と平くんを見ていると手を引かれ綾部くんたちの元へと誘導された。もしかして一緒に食べていいの?…正直いやだったけど、他に席ないのでありがたく平くんに着いて行くことにした。

平くんの隣に座らせてもらったんだけど…。平くんの前の席に綾部くん、綾部くんの隣に自称学園のアイドルで有名な美少年くん、その美少年くんの隣にくのたまの中で人気な斉藤タカ丸さん。この並びに流石のわたしも平くんに同情した。
平くん、元気出せよ。と連れてきてもらっておきながら失礼な事を考えていたわたし。顔をあげると目の前の美少年と斉藤さんが『誰だコイツ』な目でわたしを見ていた。タカ丸さんはまだマシだ、美少年に至っては睨んでいた。わたしにはそう見えた!忍たまマジ恐ろし!
ご、ごめんなさい…!ほんとそうですよね、くのたまのわたしが忍たまに混じって一緒にご飯とか、折角のおばちゃんのおいしいご飯がおいしくなくなりますよね!よりによってわたしでごめんなさい!!死にます!!


「は、はじめまして、わたしは…」
「このくのたまの名は結城千鶴と言って、私の大ファンなのだ!」

恐る恐る自己紹介をしようと口を開けたと思ったら、平くんが被ってきた。でも正直すごく助かったのは言うまい。
無理やり連れてこられてたように見えたけど…、なんていう斉藤さんの台詞はみんな無視だ。

「はじめまして、くのいち教室の結城千鶴です。」

よろしくね〜、とにこにこ自己紹介してくれた斉藤さん。目の前の自称アイドルくん…田村三木ヱ門くんは平くんに負けないくらい自分大好き少年でした。平くんで慣れてしまったので、あまり驚きはしない。うん、自惚れで言えばまだ平くんは負けてないけどね。なんて考えてると、田村くんが「私は!お前なんかとよろしくしないからな!フン」と思いっきりわたしを睨んできたのだ。え!何故!?な何故わたしは殺気を放たれている!?わたし何かしちゃった!?わたしたち初対面!!アイドルなら笑顔を振り撒くべきだよ!?なにそのゲス顔超怖い


「千鶴はいい子だ!」
「はあ?滝夜叉丸のファンにいいやつはいないよ!」

平くんがわたしを庇ってくれたのだが、これはひどい言われようだ。わたしではなく主に平くんが。
唾が飛ぶので二人とも怒鳴らないで欲しいんだけど…。と思っていたら何か口喧嘩が始まってしまった。斉藤さんもまあまあと止めに入るが、全く聞く耳を持たない二人。綾部くんに至っては興味なしでお味噌汁を啜ってた。


「あー…け、喧嘩はそこまでにして、食べよう?」
「お前は黙ってろよ!」
「す、すいません…」

田村くんに怒鳴られて思わず謝ってしまった。なんでわたし謝ったんだ。黙るのはお前らだろ!!なんてこのわたしが言える筈もなく喧嘩は続く…。
結局二人そろって食堂のおばちゃんに怒られていた。田村くんよりおばちゃんのが断然怖いです。

平くん、わたしの所為でいろいろと申し訳ない…と思っていたら綾部くんがいつものことだから、と。なんだいつも喧嘩してるのか…じゃなくて綾部くんにまた心の中読まれたッ!!




 

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