いちばん!

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今日のわたしはついていない。

七松先輩に会ってしまった。


七松先輩のボサボサ頭を見かけた時に嫌な予感は感じていた。その嫌な予感は的中。そこで逃げ出しておけばよかった、と今頃後悔してももう遅いよね、はは。


「千鶴!いけどんマラソンをするぞ!」
「いや、結構です」

思わず即答してしまった。七松先輩を見れば大きな目でわたしの顔を見ている。いや、そんな目見開いて見なくても…。怖いんですけど…。

「い、いやあ、あのですね…それは、その…あれですよ…ていうか、今日は委員会じゃないですよね?まず、わたし体育委員じゃないですし…」

あああ!どうしろってんだ!七松先輩のことだからこまかいことは気にするな!ですよね。ああもう七松先輩苦手だ!笑顔なのに妙に怖いもん!助けて滝夜叉丸くん!


「こまかいことは気にするな!」
「ですよねわかってます…」
「どうせ今暇だろ?」

なんだこの先輩超失礼だな。どうせってなんなの?確かに暇だけど!……じゃないでしょ、わたしも何か勉強しろよ、と!これじゃあ立派なくのいちになれないぞ、と!
七松先輩を見ればそれはもうかわいらしい笑顔でジリジリと迫ってきていた。それを避ければ案の定捕るのがわたし。激しく肩を組んできた。超近距離でしかもにこにこ笑顔でわたしの目を見てくる。うう…そんな顔で見つめてきてもわたしは…


「そうだよな?」
「は、はい…暇です!!」

あああもう!こんな自分嫌いだ!!よし、いい子だ!なんて言ってガシガシと頭を撫でてくる七松先輩、絶対確信犯ですよね。この悪魔!!ていうかいちいちスキンシップが激しい上に雑なんですけど!
さりげなくわたしの肩に回ってる七松先輩の腕を解いてると、滝夜叉丸が七松先輩を呼びながら走ってきた。あああ救世主!仏様!!


「おお、滝夜叉丸!」
「七松先輩!今日は委員会はないはずですが…!それに千鶴が嫌がってますよ!」
「滝夜叉丸はこまかいなー」

こまかくねえよ。あなたは少し気にしなさい。ともいえず小さな声で滝夜叉丸くん気にしないで…、といえば滝夜叉丸くんは同情の目を向けてきた。わたしを助けようとしてくれてたんだよね、ありがとう…。わたしの分も長く生きて…


「じゃあ…滝夜叉丸も裏裏裏山までマラソンするか?」
「え゛」

何故そうなる七松うううううううううう!!!滝夜叉丸くん完全にとばっちり。わたしの所為ですね、ごめんなさい…。

「では私が行きますので千鶴は解放してやってください!」
「た、滝夜叉丸くん!わたしは大丈夫だよ!」

本当は嫌だけど!わたし体力あまりないし、いきなり裏裏裏山までマラソンとか絶対無理だけど!でもわたしの代わりに滝夜叉丸くんが地獄のマラソンに連れて行かれるのはもっと嫌だ!ただでさえ委員会休みの日なのに!
それでも、いや千鶴は体育委員とは関係ないのだ、と言って引かない滝夜叉丸くん。やっぱこいついいやつ…。


「千鶴、やるよな?」

滝夜叉丸くんの言葉に甘えようかと心が揺れていたけど、七松先輩の捨てられた子犬のような瞳に思わず頷いてしまった。あああわたしはまた七松先輩に騙されて…!騙されるほうが悪いんだ…!バカ、わたしのバカ!


「じゃあそういうことだから行ってくる!滝夜叉丸は次回の委員会に向けてゆっくり休んでおけ!」

そう言った七松先輩に俵のように担がれた。この体制地味にきついんだけど…、じゃなくて!それじゃあマラソンになんないですよ、七松先輩!そう言う前に走り出した七松先輩。ぎゃああ舌噛む!!


「七松先輩!私も行きますー!」

滝夜叉丸くんが着いてくるのが見えた。滝夜叉丸くんは困ってる人を放っておけないタイプとみた…。いや、でも滝夜叉丸くんの自慢話で困ってる人多いんですけどそれは…。…面倒見がいい、と言っておこう。




 

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