いちばん!

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七松先輩に担がれたまま、というわけにもいかず、おろしてもらったものの。わたしの体力は早くも限界に近づいていた。今裏裏山を少し越えたところだよね…ああ、先が長く感じる…。
七松先輩はいけいけどんどーん!と一人で走っていってしまった。七松先輩はとっくに裏裏裏山に到着してるだろうなあ。人間じゃないからあの人。滝夜叉丸くんともだいぶ差ができてしまっている。ていうか七松先輩一人でマラソンしたほうが絶対効率いいよこれ…なんていう言葉は心のうちにしまう。七松先輩もわたしの為に付き合ってくれてる、きっとそうだよね、そう思うしかない。
わたしのペースももう歩いてるんじゃないか、というほどにゆっくりだった。ああ、お風呂に入ってお布団で寝たい。むしろお布団になりたい。

向こうの方に蒲葡(えびぞめ)の忍装束が目に入った。滝夜叉丸くんだ。あれ、怪我でもしたのかな、でも滝夜叉丸くんがそんなへま…あ!もしかして待ってくれてるのかも。そう思い、少しスピードを上げて走る。なんだ、わたしまだ体力あったんだ。


「はぁ…たき…はぁ…」

滝夜叉丸くんのところに着いたんだけど、喋れないというすごく情けない姿のわたし。おい、と心配そうに話しかけてくる滝夜叉丸くんに今息整えるから、というように手の平を滝夜叉丸くんに向ける。話せるまで待っていてくれた滝夜叉丸くんはやはりいいやつ。

「待っててくれたんだよね、ありがとう…」
「まあ…千鶴が迷子になっていたら探すのが大変だからな、」

別に心配になって待っていたわけじゃゴホン、なんて言ってる滝夜叉丸くんを見てひどく安心した。何に対してかはわからないけど、心が暖かくなって元気が湧いてきたのは確かだ。滝夜叉丸くんの自惚れオーラは侮れない。あと少し頑張ろう!
滝夜叉丸くんの話しにさすがのわたしも迷子にならないよ、と呟く。いまだに息の荒いわたしに滝夜叉丸くんは大丈夫か?と心配してくれる。

「うん、大丈夫。滝夜叉丸くんを見たら元気でたよ!ありがとう」

笑って言えば一瞬固まった滝夜叉丸くん。なんだ?なんか変なこと言った?と思い覗き込むと、フイ!と勢いよく顔を逸らして走り出してしまった。え、ちょっと!

さっき、一瞬顔が赤い滝夜叉丸くんが見えた気がしたんだ。気のせいかな。
滝夜叉丸くんの後ろ姿を見つめながら走っていると裏裏裏山はあっという間でした。




 

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