いちばん!

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「ごちそうさまでした。」

あー、朝から食べた食べた!おばちゃんの作る料理は本当に美味しいから、朝でもお腹に入っちゃうんだよね……って駄目じゃん!!!ダイエットするって決めたのに!!おばちゃんの栄養たっぷり超美味な料理じゃダイエットは難しいよ…。絶望に打ちひしがれるそんなわたしをサエちゃんは呆れた顔で置いていく。うえええん、待ってよ!
二人で食堂を出たところに滝夜叉丸くんが立っていた。おはよう、と言えば早口でおはようと返ってきた。あれ?滝夜叉丸くんどうしたんだ?いつもおかしいけど、今日もやっぱりおかしい。


「千鶴、今ちょっといいか?」
「え…」

じゃあ行ってるわね、とサエちゃんは先に行ってしまう。滝夜叉丸くんを見れば、平然を装っているつもりなんだろうけど、妙にそわそわしていた。どうしたんだろう。何か、重大な話なのかな?ああ、緊張してきちゃったじゃないか!

「今度の休みに…」
「うん?」

そう言ってから滝夜叉丸くんは黙ってしまった。え?今度の休みに何?その先が一番気になるんですけど、滝夜叉丸くんや。滝夜叉丸くんを見れば、口をぱくぱくさせていた。…何?ま、ち…

「あ!滝夜叉丸くん!今度の休みに何か予定あるの?」
「な、ないぞ!でもその日は…」
「町に行こう!…えっと、わたし何か買いたいものがあるんだけど、着いてきてくれないかな?」

そう滝夜叉丸くんの顔を覗き込む。驚いてる滝夜叉丸くんを見て、少し不安になった。…やっぱり突然次の休み暇かって、滝夜叉丸くん忙しそうだし予定入ってそう。断られるかな…。絶対断られる!後先考えずに発言するのがわたしです!


「ま、まあ!行ってやってもいいぞ!次の休みは偶然にも予定はない。このセンス抜群な私に任せておけ!」
「やったあ!うん!よろしくね!」

よかったあああ!ちょっと滝夜叉丸くんのセンスは信用できないけど…!ああ、久しぶりに心臓バクバクした…。はしたなくも、ぴょんぴょんと飛び跳ねて全身で喜びを表現していると、少し喜びすぎじゃないか?とあの自惚れ屋さんの滝夜叉丸くんに疑われてしまった。滝夜叉丸くんが自惚れないなんて珍しい!ほんとだってばほんと!

二人でニコニコと会話していると、少し距離を置いたところに三之助くんが立ってこちらをじ、と見ていた。…目バッチリ合っちゃったよ。

「二人で逢引っすか」

さ、三之助くん!?聞いてたんだ!っていうか、逢引ってそんな…!
滝夜叉丸くんを盗み見れば、真っ赤な顔で否定をしていた。そ、そんなに必死になって否定しなくても…。ほんとの事だから何も言えないけど。


「次の休みに町に行くんだけど、三之助くんも一緒に行く?」
「はあ?やっぱり結城先輩って馬鹿ですよね」
「え!なんで!?確かに馬鹿だけどなんでよ!?」

じゃあ阿呆で、それでいいですか、と三之助くんに呆れた顔で面倒くさそう言われた。ぐぬぬ…なんだこの子…結構言うじゃないか…!こ、この〜…!何も言い返せないのが悔しい!!


「私用で滝夜叉丸に会うのが嫌なんでいいっす」
「なんだと三之助?」

今の言葉は滝夜叉丸くんじゃなくても怒るよ、三之助くん?素直な子はいいけどね!でもね、ちょっと言い方ってのもあるんじゃないかな!
ガミガミ怒る滝夜叉丸くんに、はいはいと面倒くさそうに返事をする三之助くん。母と思春期の子供に見えなくもない。楽しそうだ。


「教室いくんで。じゃあ」

そう手を上げて立ち去る三之助くんだけど、教室とは全くの別の方向へ向かっていた。三年生の教室はそっちじゃないよ、というわたしの言葉に三之助くんは振り返り、あれ?と首を傾げた。隣からはため息が聞こえる。





 

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