いちばん!

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いつもの様に滝夜叉丸くんに戦輪の輪子ちゃんについて語られています、どうもわたしです。
ああいい天気だ。こんないい天気な日には滝夜叉丸くんの輪子ちゃんの話にかぎ………ぎぎぎぎるわけない!…と言った様に、さっきから妙にむちゃくしゃしているそんなわたしです。

滝夜叉丸くんは輪子ちゃんをすごく愛でている。聞いてるこっちが恥ずかしくなるくらい。そんな台詞をツラツラと輪子ちゃんに言い放つ滝夜叉丸くん。器用に撫で回し、頬擦りまで。ああ滝夜叉丸くんの綺麗な顔が切れないか怖い!そんな凄まじい愛し方に輪子ちゃんって本当に実在してる人なんじゃ…?と思ってしまう時がある。居ない筈なのにそんな感じがして何だか胸がむかむかする。
でもそこまで自分の武器に愛着を持てるなんてすごいよね。手入れを欠かさずに特訓まで。田村くん然り。女の人の名前を付けちゃうまで愛してるってことは…田村くんは一体何股して……いやいや、そんな事はどうでもいい。わたしもそろそろ得意武器を見つけるべきなのか。


「おい、滝夜叉丸」

輪子ちゃんにちゅ、と口付ける滝夜叉丸くんを見て苦笑いしていたところに田村くんがサチコちゃんを持って現れた。わたしがいつも持ち歩いてる武器なんて苦無くらいしかない。かといって苦無も言うほど得意ではないわたしは一体どうしたら…


「日向先生がお呼びだぞ」
「そうか、わかった。」

話の途中だが…、と申し訳なさそうにわたしを見ていた滝夜叉丸くんにいっておいで、と言う。輪子ちゃんの話は別に今じゃなくてもいいからね。わたしには意味の無い話ですし……。続きは帰ってから必ず!という滝夜叉丸くんにはいはい、と手を振って見送る。………輪子ちゃんの話なんて聞きたくないんだけどな…。滝夜叉丸くん、たまにわたしの存在を忘れてるもん…。輪子ちゃんの話をしている時の滝夜叉丸くんはかっこいいんだけど…なんだかなあ…。居心地が悪いというか…。
滝夜叉丸くんの小さくなっていく後姿を見て思わずため息をしてしまったわたし。田村くんが妙にニヤニヤして近づいてきた。な、なに、その顔!

「どうかしたか?」
「…え!な、なんでもない!」

し、しまった。田村くん居たの忘れてため息なんてついてしまった。思わず必死に否定をしたのが悪かったのか、わたしの隣に座ってきた田村くん。一体なにを言われるんだ!?


「滝夜叉丸のやつ馬鹿か…」
「え?」
「いや!滝夜叉丸、輪子の話ばかりだな」
「…ま、まあね…」

突然そんな事を言い出した田村くん。目を逸らし遠い目をしながら、田村くんも人のこといえねえだろ、と心の中で呟く。目を逸らした所為で田村くんにため息をつかれた。

「はっきり言ったらどうだ?」

本心じゃないって事バレてる…。まあそりゃそうだよね、目思いっきりそらしちゃったし。田村くんを見れば、真剣な顔つきでわたしを見ていた。そんな田村くんには全部御見通しの様で。…ふざけてるわけじゃなさそうだし…言ってみてもいいかもしれない…。

「…た、大したことじゃないんだけどね!…最近、滝夜叉丸くんの口から輪子ちゃんの話がでると何だか胸がもやもやするっていうか……滝夜叉丸くんは好きなんだけど、その話はもう聞きたくないなって思っちゃって……って!わたしなに言ってんだ。これじゃあただの嫉妬じゃないか」
「ああ、嫉妬だな」

そうあっさりと認める田村くん。言葉にしてみて気づいたけど、田村くんもそう思った!?…じゃなくて!嫉妬って言っても相手は戦輪だから!武器!無機物!

「物に嫉妬って!ありえないから!」
「っていうか、お前今さらっと滝夜叉丸のこと好きって…」
「…え?」

お前も隅に置けないなあ、なんて言って笑ってる田村くん。
え、なんで…?なんで!?わたしそんな事言ってないよ!…言ったっけ?……ああああ!!間違えた!それはきっと違う!

「そ、そそれはその…!滝夜叉丸くんの話がっていう意味で!…いや、別に滝夜叉丸くんも好きなんだけど…じゃなくて!ほんとに違うから!」
「あーはいはい、そういうことにしといてやるよ」
「信じてないでしょ?」
「うん」
「やっぱりー!」

完全に玩ばれてる…!?田村、お前歯食いしばれ…!ていうか、なんでわたしこんなに否定してるんだろう。滝夜叉丸くんを好きなのは本当なんだから別に…………そ、そういう異性的な意味での好きではないけど…!…多分。
…え?ちょっと待って?多分って事は、そういう意味で好きかもしれないってこと…?え、これって自分のことだよね?なんでこんなにもわからないんだ…!も、もし!…わたしが滝夜叉丸くんをそういう意味での…すき…だとしたら……あああああ。自分の考えに顔が熱くなる。よそう、もう考えるのはよそう!


「うわー…何考えてんだか…」
「あああ違うの!ほんとやめてよ!」
「勝手に考えて赤くなってるのは自分だろう?」
「そうだけど……あああどどどどどうしよう田村くん…!」

自分でも何がなんだかわからなくて、田村くんに助けを求める。余裕そうな、ちょっと腹立つ笑みを浮かべる田村くんなら、わたしのこのこんがらがってるよくわからない気持ちを理解してくれるかも…!…と思っていた時期がわたしにもありました。田村くんに自分で考えろ、と肩に乗せていた手を払いのけられた。つ、冷たい…!自分で考えてもわからないから相談してるのに…!…っていうか、わたしなんで田村くんに相談してるんだ?相手の話に乗せられて思わずベラベラと…!これじゃあ立派なくの一になれない…!


「あー見ててイライラする」
「え、ごめんなさい…」

わたしが馬鹿だからですよね、すいません!ほんと、こればっかりは治せないんで…!

「もっと自信持っていいと思うぞ。この私の様にな!」
「…それってどういう…?」
「そのままの意味だボケ!…千鶴は千鶴だろ?…じゃあな!!」

いや、別に田村くんみたいになるのが嫌とかそういう意味で聞いたのではなくてですね…。ってえ?今千鶴って…。
驚いて彼を見ると、顔を赤くした田村くんはサチコちゃんを持ってスタスタと歩いていってしまった。

「………人間に対しては不器用なのか…?」


田村くんの言葉……わたしはわたしだから自信もて…もしかしてため息ついていたわたしを励ましてくれた?



 

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