いちばん!

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「おまたせ」

田村くんに励まされ、呆気にとられていると滝夜叉丸くんが戻ってきた。今三木ヱ門いなかったかぁ?なんて聞いてる滝夜叉丸くん。

「おかえり、滝夜叉丸くん。」

そう言って滝夜叉丸くんを振り返れば、先ほどのあんなことが頭の中に浮かび上がった。 す、き、……ぎゃああああああああああああ!!!!!
ボッと音がなりそうな勢いで顔が熱くなった。そんなわたしを、千鶴、どうした?と顔を覗き込んでくる滝夜叉丸くん。や、やばい…!

「ななななな、なっんでもないから…!」

滝夜叉丸くんの顔を見れなくて思わず逸らす。な、なんだこの気持ち…!心臓が尋常じゃない程早く振動する。その音が耳に届いた。


「もしかして…三木ヱ門に何か言われたのか…?」
「う、ううん!だ、だ大丈夫だから気にしないで!」

少し低い声でそう言う滝夜叉丸くんを否定すれば、彼は眉を寄せた。納得していないみたいだ。田村くんに色々言われたのは確かだけど…!


「三木ヱ門に何か言われたのだったら、私が言ってきてやるぞ?」
「ほんと!そういうのじゃないの!」

そう田村くんのところに行こうとする滝夜叉丸くん。引きとめようと、思わず滝夜叉丸くんの手を握ってしまった。それに大慌てで手を離す。わ、わたし、手なんか…!あああああど、どっどどうしよう…!!

「ち、違うの…!滝夜叉丸くん…あの…ね、」

思わずそう口にすれば、滝夜叉丸くんは止まってわたしに体を向ける。もうはっきり言ってしまおう…!


「……別に恋仲ではあるまいしこんな事を言うのもなんだけど、…わたし、輪子ちゃんの話を聞きたくない…。輪子ちゃんの話を聞いていると胸がもやもやして苦しくなるの…だから…それを……」

恥ずかしくて、自分でも何を言ってるのかよくわからなくなって、怖くなって俯く。今更滝夜叉丸くんに嫌われないかななんて思ってしまう。
もう、のぼせて倒れてしまうんじゃないか。それほどに顔が熱くなっていた。


「わかった。もう輪子の話はよそう。…今度は千鶴の話を聞かせてくれ」


優しげな声色でそう言った滝夜叉丸くんを見上げる。優しく綺麗な笑顔で笑っていた滝夜叉丸くんを見てほっとし、大きく頷いた。

「うん、いっぱい話すね…!」

よかった…!優しい瞳に見つめられて、釣られて笑う。
すると、ゆっくり近づいてきた滝夜叉丸くんに抱き留められた。


「ど、どどうしたの滝夜叉丸くん…?」
「…わ、私は千鶴のその顔を、三木ヱ門…に限らず他の人に見せて欲しくないのだ」

滝夜叉丸くんの胸板に押さえられて顔は見れなかったけど、その滝夜叉丸くんの体はわたしと同じくらい熱くなってくるのがわかった。それに、わたしと同じくらい速く刻まれた心臓の音が聴こえる。

すき………やっと気づいた。わたし、滝夜叉丸くんの事好きなんだ…。好き、好き。

そっと、滝夜叉丸くんの背中に手を回す。
滝夜叉丸くんも同じこと想ってくれてると、いいなあ。



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十で終わりませんでした。十一で終わりです。
 

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