【金爆】夢小説(長編)
□きみいろサンシャイン10
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波川さんと透くんが帰ってしまったので、研二さんと僕らバンドメンバーという変わったメンツで行くことになった二次会。
でも僕の記憶が正しければ、研二さんは淳くんからも豊からも人気があったはずだ。
もっとも、豊は持ち前のキャンデレと負けず嫌いな性格ゆえに、毎回ケンカ態勢だけれども。
それでもボウリング場からカラオケボックスに移動する間に
「ねぇねぇ、研二さんのこと研二っちって呼んでもいい?」
「うん、ええよー」
なんて会話を聞くもんだから、僕が心配する必要は全くもってないだろう。
みんな出会い方はバラバラだった研二さんだけど、あまりにも早く僕らと馴染めたのでいっそ驚いてしまう。
まるでもとから僕らと友達だったみたいだ。
「女々しくてッ女々しくてッ女々しくてッ…」
正直に言おう。
「つーらーいよーーーーーッ!!!」
盛り上がりすぎだ。
「研二っち、歌うまーい!」
「照れるけん、あんまり褒めんでー」
「ビール頼もうぜ、ビール!」
笑顔、笑顔、笑顔。弾けまくり。
こういうときの淳くんのテンションの上がり方は半端じゃないということを、僕は学校祭で身をもって知っていた。
もちろん豊だって、当日はちゃんと僕の打ち合わせどおりに動いてくれる。
でも、別にステージの上じゃなくたって、こんなにも僕らは明るい。
もともと僕と豊で静かに計画していたバンド。
それが今じゃこんなにも輪を広げた。
ちなみに豊の発言には「未成年だから頼めないよ」とコメントしておく。
「やっぱかっこええねぇ」
僕が歌う「Hot Limit」を聞きながら、研二さんはそんな感想をもらした。
そんな直球で褒められても、照れくさくて振り返れやしない。
「学祭のステージ見ててずっと思っとったけど、キリちゃんホント歌うまかねー」
「だろ? なんせうちのリーダーだからな」
なぜか豊がどや顔をさらす。
ちなみに僕は歌っているせいで会話には加われない。
「やっぱり研二っちにもわかる? 鬼龍院翔のあふれ出る才能!」
「うん。今回の学祭で、やっぱりバンドはええなって思ったんよ。オレもギターがやりたくて音楽のこと勉強してた時期もあったけんね」
「え、そうなの!? じゃあ、じゃあじゃあ研二っち、今フリーだよね? うちの部活に入らない!?」
「淳くん、近い近い。落ち着いてー」
興奮するにつれ隣のソファから身を乗り出して顔を近づけてくる淳くんを、研二さんがやんわりと押し戻す。
なんか今、聞き捨てならない会話が聞こえたような。
「淳くん、…マジ?」
豊が片方の眉をつり上げている。
「マジだよ、大マジだよ! だってこんなにイケメンだし、喜矢武さんも研二っちがきたら…」
「淳くん」
優しい声が淳くんのセリフを遮った。
「ありがと。でも大事なことは自分の口から言うけん、だいじょーぶよ」
研二さんが淳くんの肩を軽く抑えて座らせる。
「研二っち…」
淳くんはまだ何か言いたげだ。
研二さんが静かに席をたつ。
一方で僕は豊の隣にそっと腰を下ろした。
緊張しているのか、研二さんはよく見ると肩が小刻みに震えてる。
空気を読んだように、BGMと化していた曲が終わった。
研二さんの大きく息を吸い込む音が聞こえて、それから。
「オレをメンバーに入れてください」
いつになく真摯な表情を見せた。