八犬伝
□風邪引きさんにご用心
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『荘がいないと、さみしいから…』
あの時荘介は、この言葉を聞き取っていただろうか。
信乃は何度も自分が発した言葉を心の中で反芻し、そのたび顔を火照らせた。
そんな大それた言葉ではないけど、あんなこと聞かれてたら、相当恥ずかしい。
信乃は切り傷だらけの両手とベットに横たわる人物を交互に見やり、ため息を着いた。
彼のそばにいたいが、荘の事だから
『信乃が風邪を引いたら困るのでやめて下さい。』
と言って拒まれそうだ。
かと言って今からどこか他の部屋から布団を持ってくるのは億劫だ。