八犬伝
□日だまりのキミ
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今日は休みだからと言っていつもより長く寝てしまった。
うっすらと夢から覚めたとき、はっきりとは覚えてないが、一番に耳に入ったのは、愛しの信乃の声。
朝一であの可愛らしい声が聞けるなんて、今日はなんて幸せな日なんだろう。
信乃はなんだか荘介と話しているようだった…
何を話していたんだろうか。
すっかり意識が 覚醒し、日の当たる縁側で一つ伸びをする。
「うーん…よく寝た。」
「よく寝たって…兄貴、今何時だと思ってるんだよ!」
小文吾に言われて壁掛けの時計に目をやると、その針は11時少し手前を指していた。
「寝過ぎたな。」
「寝過ぎってレベルじゃねーよ!!」
小文吾のつっこみ声に反応するかのように、どこからか小さなうなり声が聞こえてきた。
「っん…」
「信乃!!」
「声がでけーよ!!」
少々人のことを言えないような小文吾の突っ込みにもめげることなく、現八は自分の世界に入り込んでしまったらしい。
現八は、縁側の一番日の当たる場所に座布団を二つ引き、丸くなって寝ている信乃を発見し、起こさないようにそっと近寄り、隣に寝転がった。
「ホント、可愛いよな。」
「荘介にはいっつもこんな顔見せてんだな…」
信乃の隣でぶつぶつと呟く現八を、小文吾は、そこら辺にあった新聞で頭を叩いて釘を刺した。
「兄貴、襲うんじゃねーぞ…」
「わかってる。ただ、ちょっと撫でるだけならいいだろう?」
そう微笑みながら頭を撫でられた信乃はというと…
「っんぅ…そーすけ…?」
「「え。」」
一瞬固まる二人。
「荘介だと思ってんのか…?」
現八に、同情の眼差しを向ける小文吾をよそに、現八はさらに信乃の頭を撫でまくる。
「あんまりやると、信乃が起きるぞ…」
小文吾の言葉はもう、現八の耳には届かない。
「綺麗な顔だよな…」
現八の手が信乃の頬を撫でたとき、
身じろいだ信乃。
次の瞬間…
信乃の手が、現八の手と重なる。
「「信乃!?」」
自分の頬を撫でる手が、現八のものとは知らない信乃は、その手に頬を擦り付け呟いた。
「そーす…け」
「あぁ…!!信乃が俺の手を!」
そんな現八が、なんだか可哀想に思えてきた
小文吾でした…
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