来神学園の平和。
□三角と、
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三角形は、面白い形をしている。
退屈な数学の時間にふとそんなことを感じた。
崩れないかたち。
歪まないかたち。
つまりキレイなかたちなのだ。
まあ、だからと言って三角関数が好きになるわけでもないのだけれど――
♂♀
それは帰り道にすみれとケーキ屋さんに寄ったときの話だ。
駅前に大きなお菓子屋さんもあるのだけれど、敢えて学校から離れた割合人の少ないケーキ屋さんを訪ねたのだった。
「やっぱここ良いよねえ」
「落ち着くしねー、店主さんいい人だし」
そんなことを話しながら私は木苺のタルトを、すみれはモンブランをパクついている時だった。
「ああ、よく来たね」
私達を出迎えたように、常連客を迎える店主の声が聞こえてきた。
思わずそちらを振り向くと、私達と同じデザインのブレザーを来た男子と目が合う。
優しそうな顔が印象的な、見覚えもない金髪の子だったのだけど。
すみれがあ、と声をあげる。
「平和島……くん、だよね……?」
私だけに聞こえる小声でそう呟いた声に驚いた。
「平和島くん?」
「あ……?」
怪訝そうな顔で睨まれて初めて気がつく。
折原くんと派手な喧嘩をしてた子だって。
やああって、彼の手にはロールケーキが入った箱が渡された。
止めるすみれを無視して私はそんな彼に近づいていく。
「よく来るの?ここ」
「……まあな。ここのケーキ、旨いし」
「だよねっ!
駅前のチェーン店より断然こっち」
「おう、……つか、お前俺の知り合いだっけか?」
「ううん、初めまして。
でも、えっと……人伝で名前とかは聞いてたかな」
ますます怪訝そうな顔をする平和島くんを見て、慌てて付け足した。
「あっと、岸谷くんとか門田くんとか!」
「あー……あいつらか。
お前、名前は?」
「一橋美琴。
よろしくね、平和島……えっと」
「平和島静雄だ。よろしくな」
苦笑したように笑うその顔は、グランドで見た姿とはやっぱり一致しなかった。
――こんな、なんていうか、普通っぽい子だったんだ?
そこで何処からか携帯音が鳴り響いた。
すみれが慌てたように携帯を手に取る。
「あ……ごめんちょっと帰るね」
残りのモンブランを慌てて食べてその場を後にした。
「んー?分かった、また明日ね!」
「うん、明日ー」