…would,

□第一章
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桜咲く季節、四月。
期待に胸を膨らませて公立高校に入学した私は、これから始まる青春の予感に高揚していた。
真新しいブレザーの制服を着て、鏡の前でくるりと一回転しながら身支度の最終チェックを行う。

「よしっ!」

荷物も忘れ物がないかチェックしたあとに、思い出したように文庫本を一冊鞄に入れた。
今日から私が通う東野高校は、地元の神奈川県にある高校だ。
偏差値はこの辺りだと高い方で、受験期間はそれなりの努力をしてなんとか合格した、念願の高校だった。
通学時間は電車に揺られること四十分。
下り電車一本なので、空いている席に座って登校することとなる。
そのため、読書をするのにもってこいの時間なのだ。
私は今密かなマイブームである一冊のライトノベルを鞄から取り出した。
つい最近に目についた、アニメ化もされている少し奇妙な題名が特徴的な小説である。
一巻の発売は少し前で、世界観に多少のズレはあるものの、ガラパゴスケータイやチャットなどは私からしたら新鮮であり、それも一つ楽しみであった。
黙々と字を目で追い、時には挿絵を眺めながらページをめくっていたのだが、しばらくして携帯の着信音が鳴り、その手を止めて携帯を取り出した。
中学の時の友達のさりなからのメッセージだった。
スマートフォンをいじりながらアプリを開いてその内容を確認する。

『美琴のとこ、今日入学式だよね!おめでとー』
『ありがと!さりなの高校は明日だっけ?』
『そーなの!せっかくの土曜なのに入学式で潰れるの、ちょっとショックなんだよね』
『あー、確かに。でも私立高校は入学式とか大規模そう!』
『あら、見にくる?(笑)』
『さりなの入学式?親じゃないんだから(笑)』
『美琴ママー』
『こんな子供持った覚えアリマセン』
『ちぇ、冷たいなあ!あ、そう、それでねー』
『んー?』
『今週日曜日……つまり明後日だけど、空いてる?』
『空いてるよん。どっか行く?』
『行きたいなって思って。私のところ私服登校だからさ、洋服調達したいから手伝って♪』
『いいよー。どこ行くの?』
『池袋行きたい!あそこに好きなブランドの本店があってさあ』
『おー、池袋!丁度行ってみたいと思ってたんだよね。しかもそれが東京デビューになるや(笑)』
『まじか!はじめての東京やったじゃん(笑)じゃあ決まりね』
『はーい』
『あっ、そうだ美琴!せっかくだから制服着てきてよ。お披露目、OK?』
『NO、やだよ恥ずかしい』
『カップアイス奢り』
『もう一声』
『31アイスレギュラーダブル奢り』
『りょーかい!集合は最寄り駅でいいよね?』
『はーい。九時集合くらいでいい?』
『OK♪じゃあ日曜日ね』
『り。入学式頑張ってね☆』
『ありがと( ´ ▽ ` )ノ』

池袋は今読んでいるライトノベルの舞台。
どんなところなのだろうかと思いを馳せながら、再び本を開いた。
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