…would,
□第二章
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セルティ・ストゥルルソンはその日も、いつもと変わらぬ毎日を送っていた。
ヘッドライトの無い漆黒のバイクに跨り、池袋に濃く漂う自分の首の気配を頼りに今日も走る。
ここ20年間ずっとそんな生活を送っているのだが、最近変わった状況というとカメラ付きの携帯で写真が取られるようになったことだろうか。
しかしそれはさして問題視する程でもなく、首を探すという行為をただ悪戯にを都市伝説にさせていくだけであった。
――せめてもう少し気配の範囲が狭まればな。
――東京には絶対ある。それも多分池袋だ。だけどそれ以上は掴めない。
――まあアイルランドから気配を辿れただけでも幸いなのかもしれないけど……
――……というか自分の身体の一部のわけだしな、当たり前か?
時折嘶く愛馬を撫でながらそんなことを考えていると、セルティの視界の端に何か落下物を捉えた。
――人形、か?
――いや……人間⁉︎
曲がりくねった首都高速の上に丁度落ちるような軌道で重力に引っ張られる人間の姿を見て、無いはずの心臓がどきりとするような錯覚に陥った。
――このままだとコンクリートに打ち付けられる……っていうか轢かれる!
そこまで考えると無意識のうちに黒い布上の影で落ちてきた人の身体を包み、素早く自分のところまで引き寄せる。
何かがキラリと光って落ちた気がするがさして気にせず、そのまま自分の背中にくくりつけると首都高速を乗り直し、逆方向の帰路を辿った。
その胸に一つだけ不安を感じながら。
――……空から降ってきたけど、まさか宇宙人じゃないよな。