…would,
□第六章
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「全然駄目じゃないか」
呟く帝人君の隣で苦笑した。
「まあ、OLさんとかに声かけてもねー……」
「高校生にナンパされて付いていく社会人の人なんているわけないのになあ……無駄だと思うんだけど」
「みんな仕事ひと段落ついて、さあやっとお昼休み!って感じだしね」
「ごめんね、一橋さん。
紀田君に付き合わせちゃって」
「いや、ついていきたいって言ったの私だし」
また女の子に振られた正臣君がこちらに歩いてくるので無駄だと思うよ、と帝人君が呟く。
「ええ?何言ってんの、話しかけるの自体が目的なんだからいいんだよ!
それにお前、『無理』『無駄』は女の子を誘うときに一番言っちゃいけないことだぞ。
しかも隣にこれでもかと言うほどの美少女・美琴がいるというのに!
あのな、美女を目の前にして、自分には無理だと思うから無理なんだ、無駄だと思う事が無駄なんだよ、解るか?」
「さっぱり解らない」
「ごめん正臣くん、私も分かんない」
「帝人のは慣れてるけど美琴に言われるとくるわー。
でも俺は美琴の可愛さからそれを乗りきることができる!」
「ごめんね一橋さん、気にしなくていいよ。
紀田くんはナンパ成功しないし、そろそろ今日は一人で60階通りの方に行ってくるよ」
「なにぃ?お前まさか、一人でナンパするつもりか?女殺しで油に地獄っちゃうのか!?」
「ナンパなんかしないよ」
一緒にしないでよ、と文句を言う帝人くんにまた正臣くんは食ってかかる。
正臣くんの方は学校の時よりも更にテンションが上がっているようで、思わずくすりと笑い声が漏れてしまった。
「ごめん正臣くんのテンションついてけない」
「本当だよまったく、一人で突っ走っちゃってさ」
続けざまに帝人くんにもため息をつかれてもなお、正臣くんはちっちっと指を振りながらめげずに楽しそうに喋り続ける。
「帝人なあ、お前は俺の実力に咽び泣く事になるぞ !
くく、お前はブームがとっくに過ぎ去っているのに今時ガングロヤマンバ状態で 、その上汚ギャルな女にでも弄ばれて捨てられる事になる。
そして美琴はあれだ、諦めず俺についてこい!そんなんじゃ荒れ狂うB組で生き残れないぞー!」
「B組確かにテンション高いけど、正臣くんほどではないって。
っていうかナンパしてるのに逆に狩られてる帝人君の状態に同情する」
「そ、そうだよ!しかも結局それって紀田君の実力関係ないよね!? 」
「ええい五月蝿い(うるさい)五月蝿い、 帝人なんか漢字で書くと五月の蝿(はえ) だ!
ついでに美琴は俺のものだからB組で生き残れまいが心配はいらない!
そして、ならば勝負だ!
俺と帝人、どっちが多くの女の子をゲットできるか!」
勢いでまくし立てる正臣くんに、思わずおーいと声をかける。
「ついでで所有権主張しないでください」
「ナンパした女の子を連れながらナンパするってどうなの?」
「ポケ〇ン的なノリで言われてもねえ」
代わる代わる入る突っ込みにも、正臣くんは一向にめげる気配がない。
「俺がトレーナーで美琴がポ〇モン……?
なんだそれ、なんだかエロチックな予感……!」
「行こうか帝人君」
「そうだね」
「嘘でしょ見捨てるの!?
俺を見捨てて帝人のところにいくのか美琴っ」
「これから毎日教室で会えるじゃん。
60階通り行ってみたいの、ごめんね。またあした!」
「しょうがねえな、今日だけ帝人にハンデな!」
そんな馬鹿話を終えて私達は60階通りに向かった。