…would,

□第七章
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静雄さんと別れたあと家路を探そうと駅の方面に歩いているとどこかで見たことがあるような二人組みが目に止まった。
全身上品でカジュアルな黒い服に包まれた女の人と、同じく高そうなのにどこかカジュアルな服にリュックを背負っている男の人が、なにやら言いながらこちらに歩いてくる。

「絶対そうだよ!ゆまっち大発見じゃん」
「いやー、でもどうなんすか?
二次元はどこまでいっても二次元なんすから……」
「じゃああの二次元的美少女の存在をどう説明するのよ?」
「それはそれなんすけどね……」

――狩沢さんと遊馬崎さん!
こちらをしげしげと伺っているので思わず声をかけた。

「……どうかしましたか?」
「あ、えっとね!このアニメに出てくる子とそっくりだったからつい!それにしてもすごいねー、なんていうのかな、違う次元から来たみたい!」
「あはは……」

まさか本当にそうですとは言えないしなあ。
っていうか私から見たらこっちが二次元なんだけど。

「ああ、俺は遊馬崎でこっちは狩沢す」
「あ、一橋美琴です。よろしくお願いしますね」
「みこりんだねん!
よろしくー!これから本屋巡りするけど一緒にどう?」
「いや、これは予定変更で一橋さんにはコスプレしてもらいたいんすけどね」
「コスプレいいねー!
みこりんならなんでも絶対似合う!あ、衣装なら任せて、家にいっぱいあるから大体要望は答えられると思うよ!」
「ええ?コスプレはちょっと恥ずかしいですよ」
「大丈夫私達は二次元と三次元を区別した結果捨てた三次元をみこりんのおかげで光を当てようとしてるんだから!」
「なにが大丈夫なんですかっ」

「おまえらなあ……」

三人できゃいきゃいと騒いでいると、後ろからため息混じりの声が聞こえた。

「ドタチン!」
「門田さん!」
「この子迷惑してんだろーが。
っつーかちょっと用事だ、来い」
「えー、ドタチンのけちー」
「けちでもいいから来いっつの」
「せめて美琴さんに挨拶ぐらいしないと感じ悪いっすよ」
「ああ……」

門田さんは二人の首根を掴んだまま笑って見せた。

「門田だ」
「あ、一橋美琴です!」
「一橋か。世話になったな。じゃ」

そうして三人は人混みのなかに入ってしまった。
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