…would,

□∞オマケ
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―美琴said―

翌日、夕方


「あれ?静雄さん」

線路の上にかかる道路にバーテン服の見知った青年がいて思わず声をかける。

「おう、美琴か」
「どうしたんですか?」
「仕事の休憩中だ。
お前こそ……学校帰りか?」
「まあ。色々寄り道もしてたんですけどそろそろ帰らないとってとこですね」
「……家、池袋じゃないのか」
「えっと……」

どうしよう。
臨也さんの家に泊まってること、言った方が良いかな?
……本当に後ろめたくなってきた。

「あの、新宿に……。
臨也さんの家に居候させてもらっ「はあッ!?」

あまりの怒声に思わずびく、としてしまう。

「なんであいつの家なんかに?」
「ちょっと身寄りが無くて……
なし崩し的に、あの」
「……美琴、もうそこに帰んな」
「……ふえ?」

呆気にとられて間抜けな声を出す私に、静雄さんは恐ろしく真剣な顔をする。

「もう二度とあいつには近付かない方がいい。
身寄りが無いなら暫く俺んち来ても構わねえから」
「あ……えと」

決めかねておろおろとしていると、とん、という音と共に臨也さんがその後ろに降りてきた。

――どこから来たんだろう。

私の視線に気が付いたのか、静雄さんが後ろを振り返る……と同時に静雄さんの拳が炸裂した。

しかしそれは読まれていたようでかわされてしまう。

「だめじゃない、美琴。
そんなことバラしちゃさあ」
「え……?」
「ほら、シズちゃんなんかに近付いたらそれだけで怪我するよ?」

難なく私に向かって歩き出す臨也さんに向かって側に立てられていた道路標識が降り下ろされる。

「おわっ!?
ほんっと常識ってものが無いよね、シズちゃんってさあ」
「るせえ!
てめえにだけは言われたかねえんだよ、いーざーやーくんよぉ?」
「おー、怖い怖い。
そうやってまた美琴に怪我させるんだろう?」
「……ッ!?
あれはお前のせいだろうが!」
「そうやって人のせいにする癖、治した方がいいと思うなあ」
「てめえ……ッ!!」





喧騒が続く道路のなか――気が付けば笑っていた。
当の二人は呆気にとられたようにこちらを向く。





「……ふふ」
「どうしたんだい、美琴」
「どうかしたのか、美琴」
   ...
「……良い人ですよね、二人とも」

『はあ?』





二人から染み出ていた殺気が消え去る。


「……なんかしらけちゃったな。
帰ろうか、美琴」
「ちょっ……おい!
待ちやがれ臨也ぁあ!」
「恨むなら喧嘩終わらせちゃった美琴を恨めよ?
あとさ、その標識ちょっと確認してみたら?」

臨也さんは静雄さんの持っている『静かに走行してください』の道路標識を指差した。

「またね、シズちゃん」

そう言って私を肩に担ぐと臨也さんは跳ぶようにその場を逃げた。

「……くそッ!」

そんな静雄さんの声を遠くで聞きながら。











「ひゃあぁあっ!?
お、下ろして臨也さんっ」
「……じゃあ、俺のこと呼び捨てにするって約束してくれたらね」
「ええ……?なんでそんな」
「そうして欲しいからって以外の理由が聞きたいのかな?」
「……なんかあるの?」
「教えないけど」
「じゃあ嫌だ」
「だったらこのまま大通り歩いて電車乗るよ」
「……分かったから下ろして」
「何がどう分かったって?」
「下ろしてってば、臨也ぁ!」

そこで私は下ろされた。
地面に足がついて安心しながら、なんだかムカついてデコピンを相手の額に近付ける。

臨也はずっとじっとしていたのに、中指を打つ瞬間にぱっと後ろに避けられて空振りに終わる。

「なんで避けんのっ」
「なんで当たんなくちゃいけないんだい?」
「ムカついたから」
「下ろしてあげたんだから感謝して欲しいね」
「下ろしてくれなかったら怒ってたけどね」

空気を弾いた右手をそのままつかまれる。

「ほら、これならいいだろう?」

下におろした手をぎゅっと握られて。
なんだか不意にも照れてしまう。

「……まあ、いいんじゃない」
「素直じゃないねえ」
「うるさいですよ」
「照れ隠しにすらなってないよ」









 
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