…would,
□第三章
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ある日の、帰り道だ。
「すみません!ちょっとそこのお嬢さん、待ってください!」
なんていう、森のくまさんのような掛け声と共に三十路通過中ですというようなおっさんが私に向かって走ってくる。
「実は私、こういう雑誌を書いておりまして。
それで――少し質問があるんですけど」
「はあ……」
「いやね、この池袋で最強っていったら誰なのかっていうのを聞いて回ってまして」
「最強……?
それって、腕力のことですか?」
「へ?え、ああ。
いや、ただ、最強という言葉に最も当てはまる人、というと……?」
「抽象的ですね。
でも……静雄さん、かな。
――ある意味では臨也さんが最強だとも思うんだけど」
最後の呟きは幸いにも聞こえなかったらしい。
「シズオさん、というとヘイワジマシヅオさんでしょうか?
いやあ、インタビューしていると度々耳にする名前なんですよね」
「そうでしょうね……」
最強という言葉が一番ぴったりくるのはやっぱり静雄さんだと思う。
「ご協力、ありがとうございました。
よければ出来上がった記事読んでくださいねえ」
男の後ろ姿を見送りながら小さく手を合わせた。
今後起こるであろう彼の未来を思いながら。
――まあ、頑張って下さい贄川さん。