…would,

□第四章
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小さなビルを見上げていると、後ろから声がかかった。

「お……美琴ちゃんじゃねえか」

「あれ、トムさん」

水希ちゃんの一件があってからそれなりにトムさんとは親しくしている。
時々こうして事務所にも遊びに来ていた。

「仕事中ですか?」

「いんや、休憩。
また来たのか?」

「えっとまあ、ちょっと顔出してみただけなんですけど」

「まあ嬢ちゃんだったら良いけどよ。
……静雄だったら多分もうすぐ戻るんじゃねーか?」

「ああ、ありがとうございます」

「まあ中入んべ?」

「入りますー。お邪魔します」

ビルの中に入っていくとちょうど後ろから静雄さんが入ってきた。

「美琴?」

「静雄さん。
あ、お二人これから仕事なんですか?」

「いや……仕事っつーか、」

「静雄に客が来てんだよ。多分そろそろ来る」

「へえ……?」


――ああ、もしかして贄川さんかな?
――ラリアット見れるかな……


かなり不謹慎なことを考える私に声がかかった。

「美琴、なんか飲むか?」

「え?あー……紅茶とか、あります?」

「ん、ある……あれダージリンっつのは紅葉?」

「あってますあってます。
ああ、カップ麺食べるんですね」

「おう、ついでに湯沸かそうと思ってな」

「ありがとうございます」

「つーか、俺には敬語止めていいからな?
めんどくせえし、その……なんだ。美琴は友達だと思ってるしよ……」

「……ありがと、静雄さん」

「そのさん、も要らねえよ」

「了解、静雄」

律儀に直す私がおかしかったようで小さな笑顔を見せる静雄に、外で来客を待ってたトムさんが来て声をかけた。

「あ、来たんすか……」

「いってらっしゃい。……最悪のタイミングだね」

お湯をいれたばっかりのカップ麺に目をやり苦笑した。

「三分で帰るから心配ねえよ」

そう言って静雄は外に向かっていった。



 
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