…would,

□第五章
1ページ/3ページ


数日後、新宿


チャイム音と同時に姿を現したのはセルティさんだった。

普段は危ないから玄関に出ないように言われているけれど、セルティさんは見間違いもないし(人間があの影のライダースーツを真似るのは絶対無理だと思う)、臨也はなにやらベランダにいるので出ることにした。

「いらっしゃい、セルティさん」

『ああ、美琴ちゃん久しぶり』

「本当に久しぶりですね!
臨也に用ですよね?」

『ああ……臨也って呼んでるのか?』

「うわ、あー、えっとまあ。
……ごめんなさい、ずっとこうなんで癖で」

『いやいや!
それは気にしないけど……そうか、うまくやってるんだね、あいつと』

「まあ、そうですね……。

あ、セルティさんスリッパって使います?」

『え?
ああ、じゃあ……ありがとう』

セルティさんを上げたところで臨也が戻って来たので声をかける。

「臨也ーっ、お客さん。
セルティさん来てるよ?」

「ありがとう美琴。

やあ……君から会いに来てくれるなんて嬉しいよ」

『お前に依頼された仕事の件で、先月会ったばっかりだろうが』

「まあいいじゃない、あのときは殆ど世間話も出来なかったんだから。……ところで、どう?
あの矢霧製薬の事件からもうすぐ一年経つけれど……『首』は見つかったかい?」

皮肉に笑って、臨也はセルティさんにお茶を出した。

――こういう嫌味はしっかりするんだから。

『私の首のことはいいんだ。
……単刀直入に言うぞ。斬り裂き魔に心当たりは』

「三枚でいいよ」

「……じゃあ私は部屋に戻ってるから」

「別に美琴はいてもいいよ?」

「私に福沢さん三人は用意できません、残念」

「美琴はそんなのいらないって分かってるだろう?」

「だめ。仕事でしょ?ちゃんとしなきゃだめだよ。
あ、じゃあ折角だし外に出てるね」

『……ごめんね、美琴』

「気にしないでください。
それより臨也に三枚分の情報しっかり教えてもらってくださいね」

『そうするよ』





♂♀


事務所を出たところで声をかけられた。

「……美琴?」

「え?正臣くん?なんでこんなところに」

「……美琴こそ。どっから出てきてんだよ」

「あー……」

「そこに住んでんのか?」

「うん、まあ」

どうしようどうしようどうしよう。

まあここはマンションであって別にイコール臨也と同居にはならないわけで。
あれ、でも別に必死になって隠すこともないかな。
いやでも正臣くんには嫌われたくない。
でもでも、そんなこと関係無しに……


「なあ、美琴」

いつもと表情が違う正臣くんに正面から見られる。

「俺らさ、初めて会ったのって入学式の次の日、教室で、か?」

「えっと……」

「俺……俺多分それより前に美琴に会ってた気がするんだよ。
入学式の日、池袋で……」

そこで一息置いて。

「……臨也さんと一緒に、会った気がすんだよ」

――降参。

「……うん、会ったね。
帝人くんと一緒に」

「もしかして……もしかしてだけどさ。
美琴、臨也さんと一緒に、」

「住んでるよ。
私には身寄りがないんだ、だから臨也……さんは、私の保護者代わりというか」

「……なんで今まで黙ってたんだよ?」

「正臣くんに……そんな顔で見られたくなかったから」

「……」

「それに、私臨也のこと嫌いじゃないんだ?」

「ッ……!」


正直な理由を目線を落としながら呟いて、そのまま踵を返した。


 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ