…would,
□第五章
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数日後、新宿
チャイム音と同時に姿を現したのはセルティさんだった。
普段は危ないから玄関に出ないように言われているけれど、セルティさんは見間違いもないし(人間があの影のライダースーツを真似るのは絶対無理だと思う)、臨也はなにやらベランダにいるので出ることにした。
「いらっしゃい、セルティさん」
『ああ、美琴ちゃん久しぶり』
「本当に久しぶりですね!
臨也に用ですよね?」
『ああ……臨也って呼んでるのか?』
「うわ、あー、えっとまあ。
……ごめんなさい、ずっとこうなんで癖で」
『いやいや!
それは気にしないけど……そうか、うまくやってるんだね、あいつと』
「まあ、そうですね……。
あ、セルティさんスリッパって使います?」
『え?
ああ、じゃあ……ありがとう』
セルティさんを上げたところで臨也が戻って来たので声をかける。
「臨也ーっ、お客さん。
セルティさん来てるよ?」
「ありがとう美琴。
やあ……君から会いに来てくれるなんて嬉しいよ」
『お前に依頼された仕事の件で、先月会ったばっかりだろうが』
「まあいいじゃない、あのときは殆ど世間話も出来なかったんだから。……ところで、どう?
あの矢霧製薬の事件からもうすぐ一年経つけれど……『首』は見つかったかい?」
皮肉に笑って、臨也はセルティさんにお茶を出した。
――こういう嫌味はしっかりするんだから。
『私の首のことはいいんだ。
……単刀直入に言うぞ。斬り裂き魔に心当たりは』
「三枚でいいよ」
「……じゃあ私は部屋に戻ってるから」
「別に美琴はいてもいいよ?」
「私に福沢さん三人は用意できません、残念」
「美琴はそんなのいらないって分かってるだろう?」
「だめ。仕事でしょ?ちゃんとしなきゃだめだよ。
あ、じゃあ折角だし外に出てるね」
『……ごめんね、美琴』
「気にしないでください。
それより臨也に三枚分の情報しっかり教えてもらってくださいね」
『そうするよ』
♂♀
事務所を出たところで声をかけられた。
「……美琴?」
「え?正臣くん?なんでこんなところに」
「……美琴こそ。どっから出てきてんだよ」
「あー……」
「そこに住んでんのか?」
「うん、まあ」
どうしようどうしようどうしよう。
まあここはマンションであって別にイコール臨也と同居にはならないわけで。
あれ、でも別に必死になって隠すこともないかな。
いやでも正臣くんには嫌われたくない。
でもでも、そんなこと関係無しに……
「なあ、美琴」
いつもと表情が違う正臣くんに正面から見られる。
「俺らさ、初めて会ったのって入学式の次の日、教室で、か?」
「えっと……」
「俺……俺多分それより前に美琴に会ってた気がするんだよ。
入学式の日、池袋で……」
そこで一息置いて。
「……臨也さんと一緒に、会った気がすんだよ」
――降参。
「……うん、会ったね。
帝人くんと一緒に」
「もしかして……もしかしてだけどさ。
美琴、臨也さんと一緒に、」
「住んでるよ。
私には身寄りがないんだ、だから臨也……さんは、私の保護者代わりというか」
「……なんで今まで黙ってたんだよ?」
「正臣くんに……そんな顔で見られたくなかったから」
「……」
「それに、私臨也のこと嫌いじゃないんだ?」
「ッ……!」
正直な理由を目線を落としながら呟いて、そのまま踵を返した。