…would,

□第零章
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「面白い奴がいるなあ」

黒い革張りのソファでうだる私を尻目に臨也はデスクで愉しげに呟いた。

「んー……?」
「ほら、君の学校のさ。隣のクラスの担任だっけ?」
「キッチー?」
「ああ、違う違う。あんなお爺さんには興味ないから、俺」
「キッチーいい人だよ……あー、那須島センセーのこと?」
「それだよ!那須島隆志、彼は実に滑稽な人間だよねえ。笑えるよ、ああいう人間を見てるとさ。
粟楠会から金借りて切羽詰まってんの、そのくせ粟楠会の関係者だとか言ってるんだよ!喜劇だよねえ?楽しいよねえ?
これはもう、俺がかき混ぜるしかないよね」
「趣味の悪さは相変わらずで安心したよ」
「自分の学校の先生のことを少しも気にしない、妙に冷酷な美琴も相変わらずだしね」
「……誰に似ちゃったかなあ」

呟いた言葉は幸いにも臨也には聞こえなかったようだ。

彼は微笑しながら私の転がるソファに近づいて、その傍らに置かれたテーブルの上の碁盤を見つめた。

「まあでも、喜劇だけじゃあない」

駒をひとつ、手にとって。

「彼だってなかなか良いカードなんだよ」


「さあて……彼を使って彼女を引き留めたら何ができるかな?」

楽しそうに、楽しそうに――

「茶番劇の始まり始まり!」

両手を広げて笑う青年を、私は見つめることしかできなかった。



 
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