…would,
□第十一章
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私は、街を見ていた。
高い病院の窓から、見下ろすように。
「……明るい」
夜なのに、街は輝いていた。
反対に空はどこまでも暗い。
「まあ……もう見慣れたけどなあ」
もう随分と長くこっちの世界にいるのだ。
つまりそれは、それだけ東京にいることと同じことなのだけれど――
「外、そんなに面白いですか」
「……あ、起きたんだ!
大丈夫?水希ちゃん」
無傷の私が病院にいる理由は水希ちゃんの付き添いだった。
セルティさんと別れたあと、意識を失った水希ちゃんを背負ってここで診てもらった。
ショックで気を失ってるだけとのことだったので、病室で窓の外を眺めながら水希ちゃんが目を覚ますのを待っていたのだ。
「気分はどう?頭くらくらしたりとか、しない?」
「しません。
でも、記憶が曖昧。
僕はなんでここにいるの?
いつ怪我したのかも覚えてません」
腕や足にあるいくつかの擦り傷や切り傷をなぞって首を傾げる水希ちゃんに、私は上手い説明をすることができなかった。
「……無事で良かったよ」
――本当は、今だって罪歌に支配されてはいるんだけど……。
その事実に胸がちくり、と痛む。
――でも『母』が杏里ちゃんなら大丈夫だと思おう……。
水希ちゃんはもう一度首を傾げて見せただけで、もう何を尋ねるわけでもなくとりとめもない会話をした。