…would,

□第六章
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その瞬間――部屋の中のインターホンが鳴り響く。

「おや、誰だろうね。アポはないし、警察のガサ入れならチャイムを鳴らすとは思えないし」
「警察のガサ入れなんてあるの……?」
「あら、一二回あったと思うけど貴女はいなかったかしらね。
……まさかとは思うけど、矢霧製薬(うち)の追手じゃないわよね……?」
「……今までそんな不安な家に住んでるなんて思わなかった」
「なに言ってるの、美琴は俺の隣に居るのが一番安全だよ?」
「ん。ありがとう」

そんな会話の中波江さんは眉を顰(ひそ)めながら、インターホンについているモニターの映像を確認した。
この映像は部屋の入り口ではなくて、マンションの入り口の映像を映し出す。
住民の許可が無ければマンションの内部にすら入れないシステムであり、大概の不審者はここでシャットアウトする事ができるのだ。

「あら……まだ子供ね。高校生ぐらい……美琴と変わらないくらいかしら」

モニターに映る少年を見て、波江が不思議そうに呟く。
ここに子供が来る事はよくあるけれど、大抵は臨也の取り巻きの女の子達だ。
ゴスロリ少女からコギャルまで様々だが、臨也を占い師かなにかと思ってくる者が大半だった。

しかし、男の子が来るのは珍しいので波江さんが不思議がるのも無理は無い。

――だけど、私はどうしよう。
――今から外に出るわけにも行かないし……ああ、もっと早く行動するんだったなあ。
――まあ正臣君には臨也との同棲はバレてるんだけど、これからの話を思うと気が重い。

そんなことをごちゃごちゃと考えていると、臨也はポン、と手を叩きながら嬉しそうな声を上げた。

「ああ、なんだ!もう来たのか!つい20分前に電話があったばかりだから、来るのは明日かもしれないと思ってたのに。ただ……ちょっと早すぎるかもね」

いつの間にか、臨也は波江の肩口からモニターの映像を覗き込んでおり、そこに映る少年の姿を見るや、迷うことなくマンション入り口のロックを解除した。

「……誰なの?」
「友達で、大事な弟みたいなもんだけど……まあ、一言で言えば――」

訝しげに尋ねる波江に対し、臨也は迷う事無く言い放つ。

「捨て駒の……王将かな」

それを聞いても前ほど気持ち悪いような感覚に襲われない自分に嫌気がさした。
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