来神学園の平和。

□四海同胞
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数日後 屋上

ふと思い立って、一人屋上に向かった。

「風つよ……」

舞い上がるスカートを抑えてフェンスに向かう。
そこからそっとグラウンドを見渡すと、改めて学校の高さを感じた。

――ほんと高いよなあ、この学校。
屋内プールまで備え付けられた校舎は八階建てで、綺麗に整えられたグラウンドは小さく見える。

遠くを見ようとすれば池袋の街並みが見渡せた。

「なんか面白いもんでもあんのか?」

「……ッ⁉︎
あ、ドタチン!びっくりさせないでよう」

「ドタチンはやめろっつの」

「えー。
どうしたの、こんなところで?」

「どうしたも何も、ここに来て本読むのは日課みてえなもんだしな。
一橋こそどうしたんだよ」

「そうだったんだ?
いや……なんとなく来てみただけなんだけどさ」

そこで私はふと思い出して、そういえば、と続けた。

「この前平和島くんに会ったんだ」

「へえ。いい奴だっただろう?」

「うん。なんか、イメージと違ったっていうか」

「噂話が先走りすぎてんだよ」

「そうかもね」

困ったような顔をしているドタチンを見て、くすりと笑ってしまう。

「……なんだ?」

「お母さんみたい、ドタチンって」

「おまえなあ……」

呆れた顔で睨む様子がおかしくて、なおも笑ってしまう。
途中からドタチンの苦笑が混ざって、屋上に暖かな和音を響かせた。



「四海同胞」

「どうしたんだよ、急に」

「知ってる?この言葉」

「ああ。この世界の人間は全て兄弟、とかって意味だろう?」

「そうそう」

頷きながら、その言葉について思いを巡らせる。

「なら、その兄弟を産んだお母さんは何処にいるんだろうね……」
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