来神学園の平和。

□四海同胞
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――ドゴゴッ!

とある平穏な日曜日の午前。
街を歩いていると、そんな非日常溢れた音が聞こえてきた。
この騒音に慣れてしまったあたり、なんだかまずい気もするのだけれど仕方が無い。
時折罵声と高笑いもセットで街に響く。

気にせずに街を彷徨っていると、急にその衝突音が迫ってきた。

「……えッ⁉︎」

振り返るとそこには楽しげに笑いながら走る黒髪の少年。

「やあ、美琴。奇遇だねえ、こんなところで」

「うわあ、二人の喧嘩に巻き込まないでよ!」

「いいじゃない、シズちゃんとも知り合いなんだからさ。
それに、困った君を見てるのは楽しいもんだよ?」

「その最低な趣味やめた方がいいと思うよ」

「誰に最低と思われてもやめる気は……おおっと!」

臨也はそこまで言って、投げられたコンビニのゴミ箱を避けながらちッという舌打ちをする。
それに応えるように金髪の少年が姿を現した。

「ちょこまか逃げんじゃねえ、糞臨也!
……って、美琴?」

「おはよ、平和島くん」

おう、と返事を返す平和島くんはさっきまでの臨也の後ろを追いかけていた人と同じ人にはとても見えない。

「そもそもなんでいつも喧嘩ばっかりして……あれ?」

溜め息と共に文句を言おうと臨也の方を向くと、そこには既に彼の姿は無かった。

「臨也?」

「あの野郎……次会ったらぜってえ殺す……!」

「また喧嘩したの?」

「そんなんじゃねえよ。
――喧嘩だとかいう問題じゃあねえんだよなあ……」

「……?」

「っつーかよ」

平和島くんは急に真面目な顔でこちらを向き直った。

「ん?」

「ノミ蟲と……あいつとは仲、良いのか?」

「いや?まあ中学校からの腐れ縁ではあるかな」

「そうかよ……」

「ああ、岸谷くんとも同じ中学だよ」

「ああな……。
あのよ、美琴って、さ」

頬を人差し指で掻きながら、

「……?」

首の後ろを掻きながら、

「……」

自分の金髪をわしわしと掻き乱して、

「……どうしたの?」

「……だぁーッッ!なんでもねぇよ!」

「へっ?」

わけのわからない私を残して、一人平和島くんは自己完結させてしまう。

「なんでもねえの、忘れろ!」

「……よくわかんないけどわかった、忘れる。
平和島くんはさ、」

「静雄」

「……え?」

「静雄、でいいから。っつーか名前で呼べ」

「静雄?……静雄」

「連呼すんなよ」

うっすらと頬を染める静雄を見て、流石に街中で自分の名前を呼ばれるのは恥ずかしいだろうと反省する。

そんな中静雄はふと時計を見て呟いた。


「腹、減ったな」
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