来神学園の平和。

□五里霧中
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某ファースト店にて。

「二人は同じクラスなんだよね?」

「ああ」

「まあな」

体格の大きな二人が小さな椅子の上で頷いてみせる。
他愛もない話をしながらハンバーガーをぱくついていると、どこからか携帯が鳴った。

「あ、私だ」

よく見ると自分の携帯に着信が入っていて。
非通知の文字に首を傾げながら、二人に断って通話ボタンを押し込んだ。

「……もしもし」

『やあ、随分と楽しそうじゃない』

嫌味なくらい爽やかな声で電話越しからでも一発で誰からの着信かを悟った。
――臨也。

「番号教えた記憶はないんだけど」

『君のプライバシーなんて俺にとってはあって無いようなものだからね』

意味が分からない。

「それ自慢しにきただけならもう切るよ?」

『まったく、君の頭はおめでた過ぎて苛ついてくるよ。
さっき爆弾投げたつもりだったのに。
じゃあ――口にさっき食べてたチョコパイのチョコ付いてるよ』

「……ッ⁉︎」

慌てて紙ナプキンで口元を拭うと確かにチョコレートがそこに付いた。

「どこから見てるの?」

『さあねえ』

「一橋?」

電話越しから聞こえる臨也の声と、怪訝そうな表情で私の名前を呼ぶドタチンの声が重なった。
身振りで大丈夫、と二人に伝えると改めて電話に話しかける。

「そういう趣味があるのは分かったけどわざわざ電話する意味が分からないんだけど、臨也?」

これがいけなかった。

「……臨也?」

そう低く呟く静雄くんの気配に一気に冷や汗をかく。

『あはは!馬鹿なことしたねえ。
あの怪物は怒らせるとおっかないんだから気をつけなきゃだめじゃないか。
まあそんな奴とは今すぐ縁切っちゃえばいいと思うけど』

「黙って帰って」

それだけ言うと一方的に通話を切った。



「ごめん、長電話しちゃって」

「相手……臨也だったんだな?」

立ち上がるようにして私に顔を近づけて問う静雄くんに曖昧に頷く。

「まあ。ごめん、本当気にしないでいいからね」

「ここで喧嘩されても困るしな……」

ぼそりと放たれたドタチンの言葉に静雄くんはばつが悪そうに席に着いた。

「……なんて?」

「えっと、結局なんで電話寄越したのかよくわかんない。
ちょっと意味ない話しただけ」

ぱたぱたと両手を振って見せる私に、ドタチンは少し視線を向ける。

「やけに焦ってたけどな」

「番号教えた覚えなかったからさ。
びっくりしちゃって」

――『観察』されてるなんて知ったら静雄くん、怒るだろうしな。

そう考えると自然とその話は回避してしまった。

「まあ、ほら。
それはどうでもいいから!
これからどうする?二人は予定入ってたりする?」

「別に。基本ダチなんていねえし」

自嘲気味にそう呟く静雄くんの横で、ドタチンは携帯を見ながら呟いた。

「悪ぃ。ちょっと予定出来たから行ってくるわ。
ありがとな」

「あ、行ってらっしゃい!」

「おう、またな」

急ぎ足で何処へかに向かうドタチンを見ながら、静雄くんは思い付いたように言った。

「なあ、美琴」

「ん?」

「連絡先、教えてくんねえか?」
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